逓信省型式試験合格受信機写真
Radio set Passed Examination by The Ministry of Posts and Telecommunications

第85号 アルファ A-300型 5球スーパー 安立電気(株) (1947-48)

No.85 Alpha Model A-300 5 tubes Super Heterodyne , Anritsu Electric Co., Ltd. , 1947-48

  

大正時代にラジオを生産し、その後通信機メーカーに転じた安立電気は戦後、軍需を失って再度「アルファ」ブランドでラジオ業界に参入した。このA-300型は同社が最初に作った中波スーパー受信機である。

Anritsu restarted radio business after the war. (They manufactured radio in 1920's and faded out) Their brand was “Alpha”.
Model A-300 was their first manufactured super heterodyne set.

  

TUBES: 6A7-6D6-6B7-6ZP1-12F, IF: 463kc, Permanent Dynamic Speaker

回路はごく平凡だが、特徴はその特異なデザインとシャーシ構造にある。キャビネット前面にはツマミがなく、ツマミはダイヤル前側のアルミシャーシに開けられたスリットにその側面が露出している。ポータブル受信機のようなデザインは、ツマミを外さなくてもシャーシが引き出せるというメリットがある。当時はラジオの故障が多く、また、ツマミの品質も悪かったことから修理の際にツマミが外れなかったり、破損することが多かった。このため、終戦直後には点検や修理を容易にするためのアイデアが盛り込まれたユニークな受信機が多い。しかし、このA-300型のデザインは、高いところにラジオを置く当時の一般家庭では使いにくかったと思われる。同社はその後このデザインを採用することはなかった。銘板には「CLASSIC TYPE」とある。装飾的なキャビネットのデザインを指してのことかもしれないが、意味不明である。

Circuit was stereotyped but construction of chassis was unique.
Knobs were placed behind the front panel.
To control knobs, the sides of knobs were exposed from the slits of chassis.
This idea was not accepted to ordinary users.
Later model did not used this idea.

同社の社史によると、この時代経営が苦しく、従業員に給料の代わりに真空管のないラジオを現物支給したそうである。
社員は闇市などで真空管を入手してはラジオを売り歩いたという。

According to official history, Anritsu fell into the crisis in business.
They paid salary in kind rather than money.
Employees gave the radio set without tubes as salary.
They sold the radios in the black market.

本機には6D6のかわりに6C6が使われている。バリミュー管の6D6は歩留まりが悪く、入手が困難だったために代わりに6C6を使うことが当時普通に行われていた。

This example used 6C6 instead of 6D6. The production of variable Mu tubes were limited.

掲載誌:『電波日本』 Vol.45, No.1,2
Appeared on The Denpa Nippon Vol.45 No.1,2 published by Nippon Denpa Kyokai

(Collection No.11589)

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