日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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LP黎明期の電蓄

-LPレコードの登場からハイファイブームへ-
1951-58
Early Japanese Radio Phonograh for LP Records


CONTENTS

LPレコードの登場

LP初期の電蓄

ハイファイブーム

電蓄展示室 (更新)

参考文献

第3展示室HOME


LPレコードの登場

戦前から研究されていた長時間レコードは、戦後、ビニールの開発によって高品質の盤を量産することが可能になった。1948年に米国コロンビアから33・1/3回転のLPが発売され、翌1949年にはRCAビクターから45回転のEP(ドーナッツ盤)が発表された。この2つの規格はしばらく主導権争いを演じるが、オートチェンジャーを前提とした録音時間の短いEP盤が、クラシックなど長時間の楽曲再生に不向きなことは明白で、ポピュラーのアルバムやクラシックにはLP、シングル盤としてEPという住み分けが確立し、コロンビア、ビクターとも両方の盤を製造するようになった。

日本におけるLPレコードは、1950年から輸入が始まり、翌51年から国産化が始まったが、公務員の初任給が6,500円の時代に1枚2,300円と、きわめて高価で、すぐに普及することはなかった。この時代のSP盤は歌謡曲などに多い10インチ盤で1枚250円である。ただし、交響曲などの場合、全曲を収録するにはSP盤3-7枚が必要になるため、LPとたいして変わらない価格となる。クラシックの全曲版レコードは、SP盤であってもきわめて高価であった。アメリカではLPはSPより場所をとらず、かけかえの手間が少なく割安な点が受け入れられ、急速に普及したという。日本では1953年頃からSP盤の生産が減り続け、1963年頃にはSPの生産はほぼなくなった(2)。

RCA Victor Model 45-J-2 , Radio Corporation of America, RCA Victor Division, U.S.A. 1950年 45回転専用プレーヤ
 
初期の45回転専用小型レコードプレーヤ。アンプはなく、ラジオやテレビのピックアップ端子に接続して使うもの。最初に開発されたオートチェンジャーユニットRP-190型を使用している。このようなEP専用のプレーヤは、1949年から1957年にかけてRCAから多くのモデルが発売された。少し遅れて日本ビクターからも発売されたが、すぐにLP兼用機に切り替わり、普及しなかった。アメリカでは戦前からSP盤をオートチェンジャーでかけることが一般的だった。45回転盤は、SPを小型化したフォーマットといえる。

(所蔵No.44013)


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LP初期の電蓄

1955年頃まではLP盤は高価で種類も少なく、LP用の安価な部品も少なかったために、従来のSP専用電蓄が主流であった。従来、電蓄は喫茶店などの業務用か、富裕層を中心とした一部の趣味人のものであったが、民放の開局以来若年層を中心にポピュラーミュージックなどへの関心が高まり、電蓄を求める層のすそ野は広がってきた。

この時代、ラジオの物品税は1951年には10%に軽減されたが、電蓄については30%と高率のままであった。したがってメーカ品の電蓄は割高であることから少なく、ラジオ商やアマチュアの手作り品が大半であった。景気が回復し、「もはや戦後ではない」と言われた1956年以降、LP、SPが再生可能な3スピード電蓄が増えていく。これには、オンキヨー、アカイ、山水、アイワ、パイオニアなどの部品専業メーカから多様な電蓄用部品が供給されたことも影響している。これらの部品メーカはその後オーディオ業界を代表する企業に育ったものも多いが、この時代にその基礎は築かれている。
この時代の電蓄のハードウェア
SP時代にはインダクションモータを使ったダイレクト・ドライブが普通であったが、LP用として低速になるとモータの振動の影響を受けやすくなったため、安価なシンクロナス・モータを使い、減速比が大きく、回転数の変更が容易なリムドライブ式が主流となった。

ピックアップは出力が大きく、安価で特殊なイコライザーアンプを使わずにLP再生ができるクリスタル型で、SPと兼用するためのターンオーバ型が主流となった。業務用や輸入品の高級品には、バリアブル・レラクタンス型や、MC型などがあったが一般的ではなかった。1950年代後半には、プレーヤーボードに3スピードモータとターンオーバ型ピックアップを取り付けた小型のプレーヤーユニットが市販されるようになった。このようなユニットを使って旧式のSP専用の電蓄をLP用に改造することも良く行われた。

スピーカはラジオにも使われる6.5”までのサイズは1950年代前半からパーマネント型に切り替わっていたが、8”以上の大型のユニットは1955年頃までフィールド型が主流だが、大型のパーマネント・ダイナミックが各社から発表されてからはパーマネント型に切り替わっていった。 

キャビネットのデザインには若干の変化はあるが卓上型、コンソール型とも、電蓄の形態そのものは大きく変わらなかった。出力管は相変わらず42が主流で、国産化された6V6も良く使われた。安価な卓上型には6ZP1を使用したものもある。1955年以降になると、mT管を使用したものが現れるようになる。最初は出力管のみ6V6などを使用したものが多かったが、mT管のコストが下がり、信頼性も上がってくると6AR5が使われるようになり、後にビーム管6AQ5が発売されると、家庭用電蓄の定番として使われるようになる。安価な小型の製品にはトランスレス式のものも1950年代後半から多くなってくる。

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ハイファイブーム

 電蓄生産の増加

1953年頃まで、ラジオの生産は増加しても電蓄の生産は(メーカ品は)ほぼ横這いであった。しかし1954年以降LPレコードの生産の増加と呼応して電蓄の生産が急増する。特に卓上電蓄は1955年以降、3万円程度の製品が現れ、所得の増加に従ってサラリーマンにも買いやすいものになった。ラジオも、大型スピーカを備え、音質に配慮したハイファイラジオが各社から発売されるようになり、ラジオに抽斗型プレーヤを追加する形の電蓄を中心にサラリーマン層にも電蓄が広がっていった時代である。

 組合せ型電蓄の流行

大手メーカからは、チューナ付アンプ部、プレーヤ部、スピーカ部が分かれたタイプの電蓄が発売されるようになった。何種類ものユニットの組み合わせが可能になっているものもあったが、コネクタなどのインターフェースはメーカごとにばらばらだった。たいていは置台や脚が用意され、デザインがそろえられた自社製品を組み合わせて電蓄を構成するタイプの商品である。他社製品との組み合わせを考慮した専業メーカやキットメーカの製品とはコンセプトが異なる。

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参考

<物価の目安>
1951年(昭和26年)頃
小学校教員の初任給5,050円
鉛筆1本10円、電球(60W)1個85円、もりそば1杯15円

1958年(昭和33年)頃
小学校教員の初任給8,400円
鉛筆1本10円、電球(60W)1個65円、もりそば1杯35円

対ドルレート 1ドル=360円

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電蓄展示室


コンソール型電蓄


メーカ品

ナショナル GX-850L型 Upright Radio Graph 42s5球スーパー付3スピード電蓄 松下電器産業(株) 1955-56年  54,000円

ナショナル UG-865型 Upright Radio Graph 6BQ5s6球スーパー付き3スピード電蓄 松下電器産業(株) 1957年 59,850円 (NEW)

ビクター RE-30型 35L6-GTp-p6球スーパー付3スピード電蓄 日本ビクター(株) 1955年 72,000円

ビクター RE-33型 6AR5pp2バンドスーパー付3スピード電蓄 日本ビクター(株) 1957年  65,000円

コロムビア RG-692型 6L6s2バンドオールウェーブスーパー付3スピード電蓄 日本コロムビア(株) 1956年頃

TEN 6SM-61型 "Gold Star" 42s5球スーパー付電蓄 神戸工業(株) 1953年頃


自作品


2A3p-p 9球スーパー付LP対応電蓄 製作者不明 1953年頃

Special 42p-p 10球2バンドスーパー付LP対応電蓄 製作者不明 1953年頃

42p-p 7球2バンドスーパー付電蓄 手製 1953年頃

42p-p 和室用8球スーパー付電蓄 製作者不明 1953年頃

Taiyo Case 42s5球スーパー付電蓄 製作者不明 1953年頃

4スピード改造42s6球スーパー付電蓄 1953年頃/1960年頃改造

セミコンソール型蓄音器改造5球スーパー付電蓄 1954年頃改造

6V6pp 2バンドスーパー付3スピード電蓄 製作者不明 1955年頃

42s6球2バンドスーパー付3スピード電蓄 トキワ工芸 1957年頃

6V6s高一Qダンプチューナ付3スピード電蓄 製作者不明 1957年頃

6V6s5球スーパー付3スピード電蓄 春日無線工業(株) 1956年頃

Corona CD-120型 6AR5s5球スーパー付LP対応電蓄 コロナ産業(株) 1957年  13,000円(キャビネットのみ)

Special PL-2000/SR-2000型 6BM8s,2バンド6球スーパー付3スピード電蓄 東京電機産業(株) 1958年頃


卓上型電蓄


メーカ品

コロムビア RG-511型 5球スーパー付卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1952年頃

コロムビア RG-700/RG-701型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1952/1954年  43,000円

コロムビア RG-600型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1956年  29,800円

コロムビア RG-508型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1958年頃  29,800円


ナショナルテーブルグラフ GR-55A型 5球スーパー付卓上電蓄 松下電器産業(株) 1953年  37,000円

ナショナルテーブルグラフ G-8A型 5球スーパー付卓上電蓄キット 松下電器産業(株) 1953年


シャープ GR-530型 5球スーパー付卓上電蓄 早川電機工業(株) 1953年頃


ビクター RE-304型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本ビクター(株) 1955年頃

ビクター RE-42B 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本ビクター(株) 1955-56年  41,700円


DENKEN DR-8型 2バンド5球スーパー付3スピード卓上電蓄 東京電気技研 1957年


自作品


GOLD KING/ナショナル G-8型シャーシ使用 5球スーパー付卓上電蓄 ゴールドキング製作所/松下電器産業(株) 1951年

GOLD KING/ナショナル G-6型シャーシ使用 5球スーパー付卓上電蓄 ゴールドキング製作所/松下電器産業(株) 1953年頃

New Televe SB.I型 6球スーパー付卓上電蓄 山際電機(株)(キャビネット) 1952年頃 3,200円(キャビネット)

OCEAN 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 1955年頃


レコードプレーヤ、ポータブル電蓄


ゼネラル RP-2型レコードプレーヤ 八欧無線電機(株) 1951年頃

ビクター RP-301型 小型レコードプレーヤ 日本ビクター(株) 1952年  4,980円

ビクター RP-8型 レコードプレーヤ 日本ビクター(株) 1952年頃

ナショナルモータ使用レコードプレーヤ 製作者不明 1952年頃

ナショナル EX-970型 ミゼットレコードプレーヤ 松下電器産業(株) 1953年 7,900円

ナショナル CL-825A 抽斗型3スピードプレーヤ 松下電器産業(株) 1957年 14,500円

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組み合わせ型電蓄


コロムビアVA-10型 Hi-Fiアンプ 日本コロムビア(株) 1957年頃 

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コンソール型電蓄 (メーカ品)


ナショナル GX-850L型 Upright Radio Graph 42s5球スーパー付3スピード電蓄 松下電器産業(株) 1955-56年  54,000円

  

  

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80K-6E5

松下の中級電蓄。まったく同じデザインでSP用のGX-850として1954年頃にデビューした。GX-850Lは、プレーヤ部をLP対応にモデルチェンジした機種である。銘板はGX-850のままだが、同社のカタログにはGX-850Lと記載されている。

アイドラーを使った自社製可変速モータF-50型を採用し、3スピード対応としている。ピックアップは自社製ターンオーバ型クリスタルである。まだSPという言葉はなく、切替スイッチの表記はLP-78となっている。回路は付5球スーパー程度の42シングルだが、電源トランスをラジオより強化し、自社製ハイファイ用8インチパーマネントダイナミック8P-52型を駆動している。スピーカはパーマネント型だが、UYプラグで接続され、このプラグを抜くとAC100Vが切れるようになっている。出力管のプレートがオープンになったままで通電することで真空管を傷めるトラブルを防ぐための安全装置と思われる。

このセットは、標準的なコンソール型電蓄より小型に作られ、また、あえてオールウェーブとしないことで物品税も低くなり、コンソール型電蓄としては低価格に抑えている。また、パネルのレイアウトやダイヤルエスカッションの外形寸法は、同社のラジオセットと共通になっていて、高価な樹脂成形用の金型の一部を共用したものと思われる。

本機のツマミは失われていたため、同時代のナショナルのものを取り付けた。参考にしたカタログの写真が不鮮明なため、この形がオリジナルかどうかは不明である。

(所蔵No.42062)

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ナショナル UG-865型 Upright Radio Graph 6BQ5s 5球スーパー付き3スピード電蓄 松下電器産業(株) 1957年 59,850円

 

 

TUBES: 6BE6 6BA6 6AV6 6BQ5 6CA4 , 8"+2.5" 2ウェイSP

松下の中型コンソール型(同社はアップライト型と呼んだ)電蓄。ST管を使ったGX-850の後継機種にあたる。mT管を採用し、フィリップスから導入した欧州系の出力管6BQ5で2ウェイスピーカを駆動する。デザインは、当時流行していたハイファイラジオに通ずる正面全面にネットを貼ったものに変更された。プレーヤ部は高級型のターンオーバー型クリスタルピックアップとリムドライブ型3スピードモータを備えている。ハイファイラジオに必要な高感度を実現するためにバーアンテナを採用しているが、アンテナの向きを変えるのに大型の本体を動かすことができないためにアンテナを回転させる機能がある。

当時、メーカ品の電蓄は、物品税が高率だったために割高だった。この機種も、大卒初任給が8千円程度の時代に6万円近い高額商品だった。高度経済成長がはじまって、電蓄の生産は増えていたが、小型の卓上型が多く、高級なコンソール型についてはメーカ品は少数派で、割安なキットなどを組み立てたものが多かった。本機の162という製造番号を見ても生産台数の少なさがうかがわれる。レコードも高価で、これだけの電蓄となると、かなりのぜいたく品であった。本機は、寄贈者の嫁入り道具の一つだったという。

(所蔵No.m42015) 横浜市 故 田邉笑子様寄贈

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ビクター RE-30型 35L6-GTp-p 6球スーパー付3スピード電蓄 日本ビクター(株) 1955年頃 72,000円

  

   

TUBES: 12SA7-12SK7-12SQ7-12SQ7-35L6-35L6-セレン

LP初期のコンソール型電蓄。国産化されたGT管を使用した35L6p-pセミトランスレススーパーを内蔵。大型の半円形ダイヤルを使ったパネルデザインは当時の米RCAに見られたもの。自社製8インチフィールド型ダイナミックを駆動する。単巻トランスを使用したセミトランスレス式で、主回路の整流は半波整流、フィールドエキサイタのみ独立したブリッジ整流で、ともにセレン整流器を使用。ステレオに切り替わる直前の時代で、モノラルのコンソール型電蓄の最後の時代のものである。プレーヤ部は3スピードのリムドライブモータにターンオーバ型クリスタルピックアップという、後のLP再生機の標準的な仕様である。

(所蔵No.42040)

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ビクター RE-33型 6AR5pp2バンドスーパー付3スピード電蓄 日本ビクター(株) 1957年  65,000円

  

 

ステレオ電蓄が発売される前年に発表されたモノラル時代最後の高級電蓄。6AR5ppのアンプで2ウェイスピーカを駆動する。プレーヤ部は3スピードリムドライブモータ、クリスタルピックアップを使用し、フローティングされている。発売されたばかりのステレオ電蓄STL-1型( 69,500)とほとんど変わらない価格である(ただし、STL-1にはラジオがない)。この年の最高級電蓄はモノラルのモデルで、まだステレオのほうが上位という位置づけにはなっていない。

(所蔵No.42030)

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コロムビア RG-692型 2バンドオールウェーブスーパー付3スピード電蓄 日本コロムビア(株) 1956年頃

  

  

TUBES: 6BE6 6BD6 6AV6 6L6-G 5U4-G

コロムビアのLP初期の最高級電蓄。2バンドオールウェーブスーパーを内蔵。回路は5球スーパーの出力部と電源を強力にしただけのもので、かなり安直なものである。シャーシもラジオのものをベースにしたらしく、大きな6L6と5U4がほとんど接触してしまっている。プレーヤ部は3スピードのリムドライブモータにターンオーバ型クリスタルピックアップという、後のLP再生機の標準的な仕様である。この機種は、1957年にRG-900型にモデルチェンジした。

(所蔵No.42041)

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TEN 6SM-61型 "Gold Star" 42s5球スーパー付電蓄 神戸工業(株) 1953年頃

  

  

 
  本来ラジオの底板に貼られていた回路図

 TUBES: 6WC5 UZ-6D6 6ZDH3A UZ-42 KX-80HK 6E5, 8" P.D.SP (ONKYO PD-182)

神戸工業のシャーシが付いている小型のコンソール型電蓄だが、これが神戸工業製かどうかは疑問が残る。ダイヤルとシャーシは、添付の回路図に記された6SM-61型マジックアイ付5球スーパーのものであるが、これは普通の5球スーパーのキャビネットに入れられてラジオとして販売されたものである。本来は大型のダイヤルの裏側に6.5インチのスピーカが納まるが、白い板でふさがれている。

この電蓄のキャビネットは、背面に関東ラジオキャビネット物品税審査委員会の証紙が貼られていることから、市販のキャビネットと判断できる。神戸工業が特注で製作したと考えることも不可能ではないが、関西に本拠を置く同社が、関東系のキャビネットメーカから箱を調達するのは不自然である。小規模なメーカかラジオ商が製作したものと思われる。ただし、シャーシが神戸工業から供給されたか、完成品のラジオを安く仕入れて解体したものだろう。

プレーヤ部はSP専用で、ナショナルのフォノモータと"NIPPONOPHONE"ブランドのピックアップが使われている。ニッポノフォンは、明治時代から昭和のはじめまで存在した蓄音器の有名ブランドだが、この時代には権利を保有していた可能性がある日本コロムビアまたは日蓄工業では使用していない。このピックアップの詳細は不明である。オンキヨーのスピーカが使われているのは特に不自然ではないが、スピーカがオリジナルかどうかは不明である。

このセットは、近年大規模な修理が施されている。スピーカバッフルボードや取付ビスも最近のものである。神戸工業のラジオと、自作の電蓄のジャンクから近年「創作」されたものという可能性も残る。

(所蔵No.42068)

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コンソール型電蓄 (自作品)


2A3p-p 9球スーパー付LP対応電蓄 製作者不明 1953年頃

 


オリジナルのコロムビアRG-83型(左)と

TUBES: 6WC5-6D6-6C6-6ZDH3A-6ZDH3A-76-2A3-2A3-5Z3-6E5, 12インチ・フィールド型ダイナミック(Magnavox)

2A3p-pの出力部を持つ、一般的な電蓄としては最高級のもの。ZEBRAの大型パワートランス、ハークの出力トランスなど、高級なパーツが使われている。スピーカはトランスに合わせてハークを使うところだが、ここでは戦前の米国マグナボックス社の物が使われている。キャビネットは市販のキャビネットメーカのものだが、この形は終戦直後のコロムビアGR-83型を模したもので、「コロンビヤ型」と呼ばれて各社から発売されていた。フォノモータは、33から78回転まで連続可変できるアカイのC-5型が使われ、初期のターンオーバー型クリスタルピックアップと組み合わせてLPレコードに対応している。

本機は、フォノモータが脱落している。

(所蔵No.42057)

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42p-p 7球2バンドスーパー付電蓄 手製 1953年頃

 

 

TUBES: 6WC5 6D6 76 6C6 76 42 42 80 6E5, 10" Electro-dynamic SP. (Waltz Model 73 Improved)

新潟県の愛好家が手作りしたコンソール型電蓄。当時の中級機の典型であった42プッシュプルで10インチダイナミックスピーカを駆動する。モータのメーカは不明だがピックアップはパーマックス(西川電波)である。スピーカは戦前からの老舗であるワルツの73号だが、これは戦後改良されたモデル。戦後はパイオニアやオンキョーの安価な新型が大量に売れる中で、戦前モデルを手直しするしかなかったワルツは経営不振に陥り、1955年頃に倒産する。

本機は、寄贈者自身がラジオ商と一緒に組み立てたものという。

(所蔵No.m42014) 新潟県妙高市、西脇様寄贈

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42p-p 和室用8球スーパー付電蓄 製作者不明 1953年頃

 

 

和室で使用するために横長にしたスタイルのコンソール型電蓄。座った姿勢で使いやすいようにプレーヤが低い位置に取り付けられている。レコードプレーヤはSP専用である。左の扉の中はレコードケースになっている。シャーシは42p-p 8球スーパーで、本格的なトーンアンプを備えている。

本機は、真空管とスピーカが失われている。

(所蔵No.42054)

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Special 42p-p 10球2バンドスーパー付LP対応電蓄 製作者不明 1953年頃

  

  

TUBES: 6D6 6WC5 6D6 76 6C6 76 76 42 42 80 6E5, 10" Permanent Dynamic Speaker (Onkyo PD-102),
BC: 535-1605kc, SW: 6-18Mc,

42p-pの出力部を持つ、一般的な電蓄としては高級なもの。"Special"は、キャビネットメーカのブランドである。当時の電蓄としては最も典型的なデザインである。シャーシやスピーカに比べるとキャビネットは貧弱で小型である。フォノモータは、33から78回転まで連続可変できるアカイのC-5型が使われ、アイワ製の初期のターンオーバー型クリスタルピックアップと組み合わせてLPレコードに対応している。この電蓄のプレーヤーボードには、ターンオーバ型ピックアップには必要ない鉄針用の「針壺」が付いている。当初はSP専用で計画されたのかもしれない。

(所蔵No.m42004) 旧ふくやまラヂオ博物館コレクション

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Taiyo Case 42s5球スーパー付電蓄 製作者不明 1953年頃

  

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80 6E5, 8" Electro-dynamic Speaker,

SP専用の典型的なコンソール型電蓄。ラジオは5球スーパーの標準的な構成で、8インチ・フィールド型ダイナミックを駆動する。ピックアップはナショナルの普及型マグネチックピックアップ#1610(1953年発売)である(SP専用)。このほかにもナショナル、サンヨーなど関西メーカの部品が多く使われている。部品は製作当時のものだが、シャーシは戦前のラジオのシャーシを流用している。Taiyo Case は、キャビネットのブランドである。

(所蔵No.42053)

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4スピード改造42s6球スーパー付電蓄 Sakai Lucky Case Co.,(キャビネット) 1953年頃/1960年頃改造

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80 6E5, 8" Electro-dynamic Speaker(パイオニアF815C),

1953年頃に、本来はSP用として組み立てられた電蓄だが、1960年頃にプレーヤー部をナショナル6U-21型4スピードプレーヤーユニット(1960-61年、4,150円) に改造することでLP対応としている。当時は市販の乗せ替え用のプレーヤーユニットを使って、高級電蓄を改造することが良く行われていたようである。

(所蔵No.m42009) 旧ふくやまラヂオ博物館コレクション

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セミコンソール型蓄音器改造5球スーパー付電蓄 1954年頃改造

 

  

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-12FK, 6.5インチフィールド型ダイナミック(Sanyo)

手回し蓄音器にピックアップヘッドを取り付けて電蓄とする方法の歴史は古いが、これはその最後期のもの。大正末期から昭和初期の蓄音器のホーンとサウンドボックスを取り外し、5球スーパーのシャーシを組み込んだもの。モータは蓄音器そのままのゼンマイ式が残されている。普及型5球スーパーの構成で、三洋電機の6.5インチフィールド型ダイナミックを駆動する。IFTやコイルなどのラジオ部の主要部品も三洋製である。すでにLPレコードが発売されていた時代にこのような旧態依然とした電蓄も使われていたのである。

(所蔵No.42042)

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6V6pp2バンドスーパー付3スピード電蓄  製作者不明 1955年頃 

 

6V6p-pの、かなり高級な電蓄。市販のキャビネットを使った手作り品である。2バンドのラジオ部はmT管が使われ、GT,STと混合の過渡期の構成である。短波が3.5-10Mcの、日本短波開業直後の短期間だけ使われたバンドであるのが珍しい。KS製3スピードのリムドライブモータとリオンのクリスタルピックアップが使われている。この時代はまだSP/LPの切り替えがターンオーバー式ではなく、ユニットを交換して行う。

本機はスピーカ(10"フィールド型)が失われている。

(所蔵No.42024)

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42s6球2バンドスーパー付3スピード電蓄 トキワ工芸(キャビネット) 1957年頃

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-76-42-80-6E5 , 8インチフィールド型ダイナミック

2バンドの42シングルのラジオ部は電蓄としては平均的な構成で、8インチフィールド型ダイナミックを駆動する。スピーカボックスは後面密閉でバスレフ型である。3スピードのリムドライブモータと、プリモのターンオーバー式ピックアップを使用している。市販のキャビネットだが、デザインは当時としてはかなりモダンなものである。

本機はスピーカが無く、キャビネットの保存状態が悪かったため、シャーシのみ保存している。、

(所蔵No.42005)

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6V6s高一Qダンプチューナ付3スピード電蓄  製作者不明 1957年頃

 

 

TUBES: 6BD6-6SJ7-6SN7-6V6-5Y3, Ge-diode, 8" Permanent dynamic speaker (Onkyo)

3スピードのリムドライブ式モータ(KS L-27型)とクリスタルピックアップ(パイオニアPIE-2300) を備える6V6シングルのコンソール型電蓄。6BD6-6SJ7-6SN7-6V6-5Y3の構成で、当時スーパーより音質が良いといわれ、電界強度の強い地域のオーディオファンに支持された高一Qダンプ方式のチューナを内蔵している。一般的なこの方式のチューナでは6AV6か6SQ7のニ極管検波とするが、本機では、リニアリティを改善するために当時極めて高価だった輸入品のゲルマニューム・ダイオードを使用している。高一Qダンプのチューナは、この時代に一部のマニアの間で流行したが、プリアンプに内蔵したり、独立したチューナとして製作されることが多く、電蓄に組み立てられたものは珍しい。

アンプ部には6SN7を使用した本格的なトーンアンプが設けられ、高級なオーディオ用出力トランス(山水SW-763型)が使われ、NFBがかけられている。スピーカはオンキョーの10インチダブルコーン型(CD-103)が使われ、スピーカー部は密閉箱となっている。キャビネットはそれほど高級なものではないが、高音質再生に強いこだわりをもって製作された電蓄である。

(所蔵No.42045)

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6V6s5球スーパー付3スピード電蓄  春日無線工業(株) 1956年頃

  

 

6V6シングルの電蓄。市販のキャビネットを使った手作り品である。ラジオ部にはmT管が使われ、GT管と混合の過渡期の構成である。シャーシはプッシュプルも組み込める大型のもので、"Trio"の刻印があり、コイル類もトリオの製品である。春日無線工業は、部品からセット製造に進出したころに、トライアンプだけでなく、電蓄シャーシも販売したが、売れずに少数販売しただけで製造中止になったという(1)。

松下製3スピードのリムドライブモータと同社ののクリスタルピックアップが使われている。SP/LPの切り替えがターンオーバー式となっている。

(所蔵No.42049)

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Corona CD-120型 6AR5s5球スーパー付LP対応電蓄 コロナ産業(株) 1957年  13,000円(キャビネットのみ)

 

TUBES: 6BE6-6BA6-6AV6-6AR5-6X4-6E5

ユニークなデザインの市販キャビネットを使ったLP対応のコンソール型電蓄。シャーシはST管用だが、mT管が使われている。プレーヤは可変範囲が広く、33~78回転を連続可変できるアカイC-5型モータと、ターンオーバ型クリスタルピックアップが組み合わせられている。スピーカ部は密閉箱になっていて、フエルトで吸音している。このキャビネットが発売された翌年の1958年にはビクターから最初のステレオ電蓄が発売される。モノラルのコンソール型電蓄の最後期のセットのひとつである。

本機はキャビネットの保存状態が悪い。特にスピーカボックス左下は本来同色のツキ板が貼られていたが、失われている。

(所蔵No.42059)

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Special PL-2000/SR-2000型 6BM8s,2バンド6球スーパー付3スピード電蓄 東京電機産業(株) 1958年頃

 

TUBES: 6E5 6BE6 6BA6 6AV6 6BM8 5M-K9 5M-K9

ヨーロッパ生まれの新型管6BM8を採用した小型コンソール型電蓄のキット。半波整流管5M-K9を2本使用して両波整流としている。レコードプレーヤは松下製の安価なユニットを採用、ターンオーバー式クリスタルピックアップを使った平均的な製品である。キャビネットは老舗のスペシャルブランドの製品で、当時流行したハイファイ機器のスタイルを取り入れている。プレーヤ正面のガラスパネルとダイヤルのガラスに別の型番が記載されている。シャーシは量産品に見られたクロメート仕上げの鉄シャーシで、キャビネット込みのキットとして供給されたものと思われる。モノラル時代最後の電蓄といえる。

(所蔵No.42064)

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卓上型電蓄 (メーカ品)


コロムビア RG-511型 5球スーパー付卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1952年頃

 

 

TUBES: 6SA7-GT 6SK7-GT 6SQ7-GT 6F6-GT 5Y3-GT, 7" Permanent Dynamic Speaker (Columbia DS-79)

コロムビアの卓上電蓄。SP専用で、モータはリムドライブ型、ラジオ部は日本製には珍しいGT管を採用している。出力管は6V6ではなく、6F6である。同社は戦後すぐの製品からキャビネットを薄型にするデザインを採用している。回転式のダイヤルはこの時期各社で流行したもので、同社のラジオにも採用されている。

本機は、プレーヤ部のツマミが失われている。

(所蔵No. S42001) 柴山 勉コレクション

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コロムビア RG-700/RG-701型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1952/1954年 43,000円 

  

  
  プレーヤ蓋の裏側にあるセットネームプレート 背面に表示されたコンクール受賞の銘板

1952年、第1回新日本工業デザインコンクール(毎日新聞工業デザインコンクール)で第一席に選ばれた作品。デザインは柳 宗理による。日本の工業デザイン初期の傑作のひとつ。このコンテストは、作品課題に対してデザインを応募するもので、日本コロムビアは「電気蓄音機またはラジオキャビネット」として「新時代に相応しいラジオ受信機及電蓄-卓上型又はスタンド型」という課題を提示した。入選作品の版権は課題を提示した会社に帰属したが、この製品では入賞を示すプレートに"DESIIGNED BY YANAGI 1952" と記載され、デザイナーを讃えている。

トランス式mT管5球スーパーを内蔵し、プレーヤはリムドライブモータ、ターンオーバ式クリスタルピックアップを使用した3スピードである。スピーカの配置は同社が「300方式」と呼んだもので、左側面に密閉された高音用スピーカ、右側面にウーハーを取り付けて2ウェイとしている。デザインを重視したためか、シャーシの引き出しや真空管の交換は困難で、整備性は最悪である。RG-700型は、柳 宗理の外観デザインを全く変更することなく、RG-701型にマイナーチェンジした。他機種と共通のプレーヤユニットが改良されているなど、細部が異なるのみである。ここに紹介する写真はRG-701型のほうである。

(所蔵No.42051:RG-701, m42003:RG-700/旧ふくやまラヂオ博物館コレクション)

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ナショナルテーブルグラフ GR-55A型 5球スーパー付卓上電蓄 松下電器産業(株) 1953年  37,000円

 

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80K, 6.5"フィールド型ダイナミック(National FD-65A)

松下の卓上電蓄。ラジオは中波専用、プレーヤはSP専用である。1951年に発売されたGR-55型をマイナーチェンジしたもの。松下のラインナップの中では卓上電蓄はこれ1機種しかなく、この上は 89,000円もするコンソール型であった。このため、この機種が最廉価版ということになるが、これでも十分高価なため、キット版のG-8Aが用意されていた。キャビネットはほぼ共通だが、ダイヤルのデザインに合わせてパネルの位置が変更されている。構造を仔細に見てみると、キット版のキャビネットGC-2型の設計のほうがベースになっていることがわかる。

(所蔵No.42056)

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ナショナルテーブルグラフ G-8A型 5球スーパー付卓上電蓄キット 松下電器産業(株) 1953年

 

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80K, 6.5"フィールド型ダイナミック(National FD-65A)

松下の卓上電蓄。ラジオは中波専用、プレーヤはSP専用である。このセットは、完成品のシャーシで供給されていたナショナル5球スーパーシャーシG-8A型を、GC-2型キャビネットに収めたもの。同社には、ほぼ同じキャビネットで、ダイヤルのデザインが異なる完成品、GR-55A型があったが、物品税率が高いことから 37,000円と高価であった。純正指定の自社製モータ、ピックアップ、スピーカを購入して簡単な配線をするだけで、シャーシの銘板を見なければメーカー品と見分けが付かない卓上電蓄が組み立てられるのである。キャビネットは完成品とほぼ同じで、ダイヤルの違いに合わせてパネルのデザインが異なるが、キットを思わせる表示はない。メーカー品の電蓄が高価になりすぎることから考え出された「節税」商品と思われる。

(所蔵No.42043)

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シャープ GR-530型 5球スーパー付卓上電蓄 早川電機工業(株) 1953年頃 

 

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80K, 7"パーマネント型ダイナミック(シャープPM-70型)

シャープのSP専用卓上電蓄。モーターやプレーヤ用の小物部品には汎用品が使われていることから、少量生産だったことが伺われる。パネルのデザインが共通の5球スーパーラジオAR-330型も存在した。

回路は、トランスが強化されている程度で、ラジオの回路とほとんど変わるところはない。スピーカも同じものである。この時代はまだ電蓄が主力製品とはなっていない時代であった。

(所蔵No.42061)

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ビクター RE-304型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本ビクター(株) 1955年頃

  

 

TUBES: 12BE6-12BA6-12AV6-30A5-35W4, Permanent dynamic Speaker

トランスレスの5球スーパーで楕円コーンを駆動するビクターの小型電蓄。プレーヤは3スピードである。価格は2万円台で電蓄としては安価だがラジオよりは割高である。木製キャビネットだが、グレーのペイントでプラスチックのような質感を出そうとしている。

(所蔵No.42036)

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ビクター Radio Electrola RE-42B 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本ビクター(株) 1955-56年  41,700円

  

  

(所蔵No.42004)

3スピードのプレーヤを備えた5球スーパー付卓上電蓄。6WC5 - 6D6 - 6ZDH3A - 42 - 80BKの構成で6.5インチ・パーマネント・ダイナミックを駆動する。卓上電蓄としてはかなり高価なモデルである。

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コロムビア RG-600型 5球スーパー付き3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1956年  29,800円

  

 

TUBES: 6BE6-6BD6-6AV6-6ZP1-80HK-6E5, 6.5インチ・パーマネント・ダイナミック

3スピード付卓上電蓄としては普及型を狙ったモデル。当時サラリーマンが購入できる限度といわれた3万円を切る価格とするために、出力管は主流の42や6V6ではなく、6ZP1である。高周波部はmT管が使われ、mTとSTの組み合わせというという変則的な構成となっている。リムドライブモータ、クリスタルピックアップ、6.5インチ・パーマネント・ダイナミックという平均的な部品を採用している。

本機は、オンキヨーのスピーカが使われているが、オリジナルでない。

(所蔵No.42010)

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コロムビア RG-508型 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 日本コロムビア(株) 1958年頃  29,800円

 

 

TUBES: 6BE6-6BD6-6AV6-6AQ5-5MK9, 6.5" Permanent dynamic speaker (Columbia PD-651)

前面パネルの大半をパンチングメタルを使ったスピーカーグリルとし、ツマミを側面に付けた斬新なデザインの卓上電蓄。回路は普通のmT管式5球スーパーであるが、新型のビーム管、6AQ5が使われている。プレーヤ部は3スピードのリムドライブモータ、ターンオーバのクリスタルピックアップという平均的なものである。以後、このようなスタイルの電蓄が流行する。

(所蔵No.42048)

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DENKEN DR-8型 2バンド5球スーパー付4スピード卓上電蓄 東京電気技研 1957年 

 

 

無名メーカの卓上電蓄。6AR5シングルのマジックアイ付2バンド5球スーパーを備え、2ウェイスピーカを駆動する。プレーヤは松下電器が市販していた4スピードレコードプレーヤーユニット6U-20型を使用している。デザインは当時の流行を取り入れているが、キャビネットのつくりは貧弱である。完成品かキットであったかは不明である。

本機は、つまみが1個失われている。

(所蔵No.42060)

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卓上型電蓄 (自作品)


GOLD KING/ナショナル G-8型シャーシ使用 5球スーパー付卓上電蓄 ゴールドキング製作所/松下電器産業(株) 1951年

 

    
 ゴールドキング製作所の広告(商報より)

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80 , 6.5インチ・フィールド型ダイナミック(Columbia)

松下の市販シャーシ、ピックアップ、スピーカを使用して汎用のキャビネットに収めて組み立てたSP用の卓上電蓄。標準的5球スーパーで6.5インチ・フィールド型ダイナミックを駆動する。シャーシ、モータ、ピックアップはナショナルだが、スピーカだけはコロムビア製である。当時は電蓄の物品税が30%と高率だったために、市販部品で組み立てられることが多かった。ナショナルのシャーシは、同社の完成品GR-55型のシャーシと基本的に同じものである。キャビネットメーカ、ゴールドキング製作所(合名会社 小沢商会)はこのシャーシに合わせてコピー品のキャビネットを製作し、G8型、GR55型と称して販売していた。

(個人蔵)

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GOLD KING/ナショナル G-6型シャーシ使用 5球スーパー付卓上電蓄 ゴールドキング製作所/松下電器産業(株) 1953年頃

 

 

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80 , 6.5インチ・フィールド型ダイナミック

松下の市販シャーシ、ピックアップ、スピーカを使用して汎用のキャビネットに収めて組み立てた卓上電蓄。まだSP専用である。縦に長いシャーシは、卓上電蓄に最適な形状である。当時は電蓄の物品税が30%と高率だったために、市販部品で組み立てられることが多かった。ナショナルのシャーシは、安価で一流メーカー品のマークが付いて高品質のセットが組めるため人気があった。

(所蔵No.42033)

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New Televe SB.I型 6球スーパー付卓上電蓄 山際電機(株) 1952年頃 3,200円(キャビネット)

 

TUBES: 6D6 6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80, 8"Electro-dynamic Speaker, BC: 535-1605kc

比較的大型のキャビネットに組まれた卓上電蓄。デザインは少し古い。Televianのマークに似たNew Televeは、SAZE CABINETのシリーズ名でキャビネットを発売していた山際電機のブランドである。地方都市で使われたものらしく、ラジオはRF付の6球スーパーだが、出力段は42シングルで、スピーカは一応8インチだが、パイオニアの安価な製品を使用している。プレーヤ部はSP専用で、"KAKUNI"という無名ブランドのピックアップを使用している。

(所蔵No.m42005) 旧ふくやまラヂオ博物館コレクション

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OCEAN 5球スーパー付3スピード卓上電蓄 1955年頃

  

TUBES: 6WC5-6D6-6ZDH3A-42-80-6E5 , 6.5" Permanent Dynamic Speaker (Encore P-8B型)

発売されたばかりのLP対応の3スピードレコードプレーヤーユニット(ナショナルRU-36型)を使用した卓上電蓄。プレーヤーボードをスプリングでフローティングとする機構が導入されている。専門メーカのシャーシ付きキャビネットを利用して組み立てられている。OCEANはキャビネットのブランドである。デザインは当時の最新のものだが、ST管とSP用のモータが組み込めるサイズになっている。

1950年代前半、このクラスの卓上電蓄のメーカ品は、物品税率が高かったために、月給が1万円もしない頃に4万円もしていた。部品を集めて組み立てれば半額以下で実現できたので、電蓄の大半は自作品だった。その後、所得の向上とともにハイファイブームが訪れ、物品税も引き下げられ、3万以下で卓上電蓄が大手メーカから発売されるようになると、キットや自作の電蓄は減少してくる。本機は、ちょうどその自作が主流であった時代の最後のものである。

この電蓄については寄贈者より製作者やその経緯が伝えられている。当時栃木県在住の製作者(故人)が音楽好きの姪御さんのために組み立てたものという。その後、持ち主は小学校教師となり、那須の山間部の学校に赴任したところ、ピアノやレコードプレーヤなどがなく、この電蓄を学校に持ち込んで体育館のステージの隅に設置し、音楽鑑賞やダンス指導などに長年使用したものとのこと。視聴覚教育が盛んになりだした頃ではあったが、放送室や視聴覚室まで備えた学校が作られた都会と、レコードプレーヤすらなかった山間部の教育環境の格差、そしてその格差を埋めるべく私物を使って努力した教師の奮闘を物語る貴重な資料である。

(所蔵 No.m42010) 栃木県、本郷様寄贈

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抽斗型プレーヤ、ポータブル電蓄


ゼネラル RP-2型レコードプレーヤ 八欧無線電機(株) 1951年頃

 

ゼネラルのSP専用レコードプレーヤ。ラジオを上に載せてピックアップ端子に接続して使う。
Fujiya RM-91G型リムドライブ・モータとクリスタルピックアップを使用。

(所蔵No.44005)

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ビクター RP-301型 小型レコードプレーヤ 日本ビクター(株)  1952年  4,980 円


(オプションのキャリングケースに入れた状態)

当時のビクター製品の中で最も安価なレコードプレーヤ。リムドライブ式のモータとクリスタルピックアップを採用。12インチ盤をかけた状態でピックアップと盤が本体からはみ出してしまうため、蓋はない。写真の手提げケースは、別売のオプションとして用意されていた(卸値 350円)。可搬型拡声器との組み合わせなどを考慮したものと思われる。

(所蔵No.44016)

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ビクター RP-8型 レコードプレーヤ  日本ビクター(株) 1952年頃

 

 
   (左)1950年製のビクター5球スーパーと組み合わせた例 (右)ターンテーブル内の銘板と周波数切り替え端子板

日本ビクターのSP専用抽斗型プレーヤ。写真のようにラジオを上に載せてピックアップ端子に接続して使うもの。自社製クリスタルピックアップとリムドライブ式モータを使用。上のゼネラルの製品と比べると、かなり高級な造りであることがわかる。

(所蔵No.44007)

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ナショナルモータ使用SP専用プレーヤ 製作者不明 1953年頃

 

市販のキャビネットを使用し、ナショナルのモータとクリスタルピックアップを収めたSP専用レコードプレーヤ。背面に「ラジオキャビネット物品税完納協会」の証紙が貼ってある。

(所蔵No.44001)

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ナショナル EX-970型 ミゼットレコードプレーヤ 松下電器産業(株) 1954-55年  7,900円

 


1955年発売の6M-410型5球スーパーとセットにしたところ

松下の簡易型プレーヤ。SP専用でベークライトの小型キャビネットにまとめられている。小型のラジオが発売されたのに合わせて企画されたものと思われる。このセットは、LPの普及により3スピードの製品に置き換えられたため1955年6月のカタログからは落とされ、短命に終わった。

(所蔵No.44009)

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ナショナル CL-825A 抽斗型3スピードレコードプレーヤ 松下電器産業(株) 1957年  14,500円

 

抽斗型プレーヤとラジオの組み合わせはローエンドの電蓄であった。これは、比較的低価格の3スピードプレーヤで、ターンオーバ型クリスタルピックアップ(#1621B)と、リムドライブ型モータR-36B型を使用している。当時、ターンテーブルが17cm以下のプレーヤは物品税が安かったため、低価格のプレーヤは、キャビネットが大型でもターンテーブルが小さいものが多い。このようなプレーヤを、俗に「免税型プレーヤ」と呼んだ。

(所蔵No.44014)

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組み合わせ型電蓄


 コロムビアVA-10型 Hi-Fiアンプ 日本コロムビア(株) 1957年頃

 

LP再生装置として、従来の一体型電蓄の上位機種として、プレーヤ、アンプ、チューナ、スピーカを組み合わせて使用する形式の電蓄が用意されるようになった。これは、現代でいうプリメインアンプに当たるセットである。6AQ5p-pで出力は10Wである。クリスタルピックアップ用のイコライザとラジオ入力、マイク/テープ入力端子を備え、音量と音質のコントロールができる。入出力端子は1ヶ所改造されたところを除いてフォーンジャックが使われている。この時代、ピンジャックはビクター(RCA)が自社製品用に使っているだけだった。チューナは電源供給を兼ねるUSコンセントで接続される。後のコンポーネントとは異なり、自社製品を組み合わせて使うことを前提に作られていた。

(所蔵No.46026)

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参考文献

(1) 宮地 浩 「オーディオ商人回顧録1-4」 『ラジオ技術』1959年.4月号-8月号 (ラジオ技術社 1959年)
(2) 通産省重工業局電子工業課編 『テープレコーダーと電気蓄音機』 (工業出版社 1961年)

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