日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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国民型受信機 (戦後の認定受信機)


CONTENTS

国民型受信機の発表

国民型受信機規格の改正

戦後の認定制度

認定受信機一覧(東京取り扱い分)

認定受信機一覧(大阪取り扱い分)

参考文献

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国民型受信機の発表

1945(昭和20)年9月、電気機械統制会が中心となって商工省、逓信院、日本放送協会、日本ラジオ受信機製造統制組合、および各メーカなど関係者が集まって戦後のラジオ受信機のあり方について協議が行われ、「無線と実験」誌1946年1月号には国民型受信機(仮称)規格が発表されている。

これは、戦前のラジオが2.5V球を使用したいわゆる「並四」「三ペン」受信機が中心で、性能が低く、再生妨害などの問題もあったことから、普及型受信機を6.3V球とトランスレスの高周波1段付4球受信機とすることになった。しかし、実際には真空管の供給などの問題により旧来の並四、高一も規格に含めた形で1946年に日本通信機械工業会(CEMA)により正式な国民型受信機規格が発表された(下表)。 

名称 使用真空管 階級 出力 スピーカー 備考 小売価格
('46.12)
小売価格
('47.4)
小売価格
('47.8)
小売価格
('47.11)
1号 12Y-V1 12Y-R1 - 12Z-P1 24Z-K2 微電界 300mW以上 マグネチック レス、局型123号相当 \600 不明 2,016 不明
2号A 6D6 6C6 6Z-P1 12F 微電界 300mW以上 マグネチック \600 1,079 1,991 2,310.00
2号B 12Y-V1 12Y-R1 - 12Z-P1 12F 微電界 300mW以上 マグネチック \600 不明 不明 不明
2号C 6D6 6C6 42 12F 微電界 300mW以上 マグネチック ----- 1,094 2,016 2,344.00
3号 12Y-V1 12Y-R1 - 12Z-P1 24Z-K2 微電界 300mW以上 ダイナミック レス、パーマネント \1,025 不明 1991 不明
4号 6D6 6C6 42 12F 微電界 1W以上 ダイナミック 初期の案 ----- 1,834 2,728 3,164.40
4号A 6D6 6C6 42 80 微電界 1W以上 ダイナミック フィールド型 \1,025 不明 不明 不明
4号B 6D6 6C6 6Z-P1 12F 微電界 300mW以上 ダイナミック パーマネント \1,025 不明 不明 不明
5号 57A 56A 12A 12F 弱電界 170mW以上 マグネチック 並四 \402 不明 1,436 不明
6号A 58A 57A 47B 12F 微電界 300mW以上 マグネチック \582 不明 2,004 不明
6号B 58A 57A 3Y-P1 12F 微電界 300mW以上 マグネチック ----- 不明 2,034 不明

価格は物価庁告示第201号(1947.4.28)、508号(1947.8.28)、1129号(1947.11.14)による

1号は放送局型123号そのもの。5号は2.5V管の並四、6号は2.5V管の高一である。国民型受信機の大半は6.3V管を使った高一の2号Aで、高級型としてダイナミックを使った4号が作られた。当初は、フィールド型ダイナミックを前提とした42-80の構成のもののみだったが、パーマネントダイナミックが市場にあらわれてきたことから、6ZP1-12Fの構成のモデルも追加され、従来の42を使うモデルを4号A、6Z-P1を使うモデルを4号Bとされた。トランスレスでダイナミックを使用する3号も、パーマネントダイナミックを使用するモデルであるが、実際に作られた数は少ない。

旧型の真空管を使った6号は主に関西で多く作られたようである。真空管の入手が困難で電圧低下に弱いトランスレスの1号、3号はあまり作られなかった。一部にトランスを簡略化するため一次側をオートトランスとし、B電源を一次から取るものが作られた。この形式のセットを「単型」と呼び、形式名の後に「単」の文字をつけて区別した。トランス一次側の片側がシャーシアースされているため、トランスレスと同じような感電に対する注意が必要になる。

実際のセットやメーカによる表記では、「国民型」を「国民」と省略したり、A、Bの区分を省略し、単に「国民二号」などと表記しているものも多い。また、初期の国民型受信機は、単に「国民型2号」などと呼ぶだけで、メーカによる型番がないモデルが多い。これは、長い間、放送局型受信機などの標準型の規格品を作ってきた習慣によるものと思われる。

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国民型受信機規格の改正

1947年に日本通信機械工業会(CEMA)は、国民型受信機規格を見直し、「普通級国民型受信機規格」CES-12として制定した(2)(6)。1947年6月には、再生妨害を起こすことから5号受信機はGHQの指示により製造が禁止された。また、旧式な2.5V球を使用する6号受信機も廃止された。このため、5号、6号受信機の認定に当たっては、認定の期間を短縮したり「当分の間」とする暫定措置が取られた。これとあわせてトランスレス球をトランス式の受信機に使う2号B型、マグネチックでありながら42を使用する2号C型も廃止された。

これにより国民型受信機は1号、2号、3号、4号A、4号Bの5種類に整理された。真空管の入手の関係で6D6のかわりに6C6を使うことや、12Fのかわりにセレン整流器を使うことも認められていた。「普通級国民型受信機」としているのは、将来的に5球スーパーも国民型受信機としようとする計画があったためである。

1947年9月16日、スーパー受信機の普及を目指して日本通信機械工業会(CEMA)では、国民型受信機規格の上位規格として、「超ヘテロダイン級国民型受信機規格」を決定し、発表した。これにより標準型中波5球スーパーの技術基準が確立した(3)。ただし、国民型受信機のように専用の型式名は決められなかった。

国民型受信機としてスーパー受信機が定められたことで、スーパー受信機も認定の対象とされた。しかし、実際に認定を受けたのは帝国通信工業のNR-204型(11187, 1947.12.18)のみである。この規格の発表以降、普及型の5球スーパーが数多く発表され、一部のメーカーは「スーパー級国民受信機」と称した。

名称 使用真空管 階級 出力 スピーカー 備考
1号 12Y-V1 12Y-R1 - 12Z-P1 24Z-K2 微電界 300mW以上 マグネチック レス
2号 6D6 6C6 6Z-P1 12F 微電界 300mW以上 マグネチック
3号 12Y-V1 12Y-R1 - 12Z-P1 24Z-K2 微電界 300mW以上 ダイナミック レス
4号A 6D6 6C6 42 80 微電界 1W以上 ダイナミック フィールド型
4号B 6D6 6C6 6Z-P1 12F 微電界 300mW以上 ダイナミック パーマネント

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戦後の認定制度

日本放送協会が優良受信機、部品を認定する制度は戦後も継続した。普及品を対象としているため学校用を除きオールウェーブやスーパーは含まれず、主に国民型受信機が認定の対象になった。 国民型受信機は逓信省に標準受信機として推奨され、大蔵省は認定を取得し、900円以下の公定価格で販売されるものについて免税とした。ただし、この免税措置は、インフレによる物価高騰で1947年8月28日に公定価格が免税点を越えたため、他のラジオセット同様に30%の物品税が課税されることになった。商工省は国民型受信機について資材の割り当てを行った。また、日本通信機械工業会による配給の出荷検査を受けるには認定品である必要があった。このため、1946年から47年には各社から国民型受信機が多く発表され、その多くが認定を取得した。

認定は従来東京でのみ行われていたが、交通事情の悪化等の理由により、松下、早川、三菱、川西(TEN)などの大メーカーが多い大阪でも実施されるようになり、受信機の認定番号は、東京が戦前からの11011からの連番で続いたのに対し、大阪分は11611からスタートした。

上記の様々なラジオに関する特典の条件が放送協会認定となっていることには批判が多かった。このため1947年11月13日の日本通信機械工業会の解散を機にGHQ、逓信省、商工省、およびラジオ業者間の協議の結果、逓信省型式試験の実施が決まった。工業会はその後1948年に、現在のJEITA(電子情報技術産業協会、旧電子機械工業会)につながる無線通信機械工業会と、有線系の通信機器メーカの団体として、通信機械工業会(CIAJ、現情報通信ネットワーク産業協会))として改めて発足した。

1948年1月8日の逓信省令第1号で、放送用私設無線電話規則の一部が改正され、標準受信機の制度が廃止された。このことで、国民型受信機や認定制度に対する国の「お墨付き」がなくなった(5)。ラジオ受信機の認定は逓信省型式試験の実施により1948年からは取得がなくなり、部品の認定のみが電波3法が成立する1950年まで継続した。

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認定受信機一覧(戦後)

型番のリンクをクリックすると詳しい説明にジャンプします。太字は、最新の変更箇所を示す。

   東京取り扱い分                11133以前の認定品はこちら
番号 写真 ブランド 型番 製造会社名 備考 価格 認定日 形式 使用真空管
11134 サンライト
/Sun Light
TTB-42国民型4号 (株)日立製作所 戦後第1号 統制額 46.7.22 高一 6D6-6C6-42-80
11135
11136 OKI 46-N-1 国民型4号B 沖電気(株) 統制額 46.8.14 高一 6D6-6C6-42-12F
11137 クラウン
/Crown
国民型1号 日本精器(株) 統制額 46.8.14 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11138 トム/Tom 11型 国民型2号 東京無線電機(株) 統制額 46.8.14 高一 6D6-6C6-42/6ZP1-12F
11139
11140 テレビアン
/TELEVIAN
13号 国民型6号 山中電機(株) 統制額 46.9.11 高一 58A-57A-47B-12F
11141 アルファ/Alpha A100型国民型2号 安立電気(株) 統制額 46.10.1 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11142
11143 クラリオン
/Clarion
オーダー2号型
国民1号型123号
帝国電波(株) 統制額 46.10.4 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11144
11145 テレビアン
/TELEVIAN
国民1号 山中電機(株) 統制額 46.10.4 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11146 トーツー TR-32 国民型2号A 東洋通信機(株) 統制額 46.11.9 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11147 クラリオン
/Clarion
国民型2号A 帝国電波(株) 統制額 46.11.27 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11148
11149 エルマン
/ELMAN
国民型4号B 大洋無線電機(株) 統制額 46.12.13 高一 6D6-6C6-42-12F
11150
11151 エルマン
/ELMAN
国民型2号A 大洋無線電機(株) 統制額 47.1.28 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11152
11153 アリア/ARIA 国民型2号A ミタカ電機(株) 統制額 47.3.19 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11154 テレビアン
/TELEVIAN
R-10号 国民型5号 山中電機(株)
統制額
47.3.19 並四 57-56-12A-12F
11155
11156 ナナオラ
/Nanaola
国民1号 七欧無線電気(株) 統制額 47.4.14 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11157 ナナオラ
/Nanaola
国民型5号 七欧無線電気(株) 統制額 47.4.14 並四 57A-56-12A-12F
11158 ミリオン
/Million
国民型2号A 岩崎通信機(株) 統制額 47.4.23 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11159 統制額 47.4.23 高一
11160 ゼネラル
/General
国民型2号A (有)八欧無線
電機製作所
統制額 47.5.16 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11161
11162 ナナオラ
/Nanaola
国民型2号A 七欧無線電気(株) 統制額 47.5.16 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11163 トヨタ
/TOYOTA
K-2-C 国民型2号A トヨタ自動車工業(株)刈谷南工場) 統制額 47.5.16 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11164 東芝/Toshiba ZS-1021
国民型1号
東京芝浦電気(株) 統制額 47.5.30 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11165
11166
11167
11168
11169 チェリー
/Cherry
RA2 国民型4号B 富士計器(株) 統制額 47.6.17 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11170
11171 テレビアン
/TELEVIAN
国民2号A 山中電機(株 統制額 47.6.17 高一 6C6-6C6-6ZP1-12F
11172
11173
11174 ビクター/Victor 4R-30 国民型2号単 日本ビクター(株) 統制額 47.7.17 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11174
11175
11176 ローヤル/Royal 国民型2号A 原崎無線工業(株) 統制額 47.7.17 高一 6D6(6C6)-6C6-6ZP1-12F
11177 メロディナ
/Melodina
H2-1 国民型2号A (株)大森製作所 統制額 47.7.17 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11178 ナナオラ
/Nanaola
国民6号 七欧無線電気(株) 統制額 47.7.17 高一 58-57-47B-12F
11179                   
11180                   
11181                   
11189 エルマン
/ELMAN
国民型2号A単 大洋無線電機(株) 東京分ラスト 統制額 47.12.28 高一 6C6-6C6-6ZP1-12F
   大阪扱い分                
番号 写真 ブランド 型番 製造会社名 備考 価格 認定日 形式 使用真空管
11611 シャープ
/Sharp
国民型1号 早川電機工業(株) 大阪分第1号 統制額 46.6.11 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11612 ナショナル
/National
4M-102
4M-108
松下電器産業(株)無線製造所
意匠,回路変更
統制額 46.6.12
47.6.26
高一 58-57-47B-12F
11613 テン/TEN DR-4型 国民型4号B
DR-4A型
川西機械製作所 統制額 46.7.23
47.9?
高一 6D6-6C6-42-12F
11614 統制額
11615 シャープ
/Sharp
国民6号D型
国民6号
早川電機工業(株) 統制額 46.8.14
47
高一 58-57-47B-12F
11616 ダイヤトーン
/DIATONE
46C型 国民型4号A 三菱電機(株)
伊丹製作所
統制額 46.9.11 高一 6D6-6C6-42-80
11617 ヘルメス
/Hermes
3K型国民2号 大阪無線(株) 統制額 46.9.11 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11618 コンサートン
/Concertone
国民型2号A 戸根無線(株) 統制額 46.11.9 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11619 双葉/Futaba 国民型5号 双葉電機(株) 統制額 46.12.13 並四 57-56-12A-12F
11620
11621
11622
11623 シャープ
/Sharp
国民2号(B型) 早川電機工業(株) 統制額 46.12.13 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-12F
11624 ナショナル
/National
4M-103
国民型6号
松下電器産業(株)無線製造所 統制額 47.2.17 高一 58-57-47B-12F
11625 ナショナル
/National
4M-104
国民型1号
松下電器産業(株)無線製造所 統制額 47.2.17 高一 12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37
11626
11627 ヘルメス
/Hermes
H-6型
国民型2号A
大阪無線(株) 統制額 47.4.25 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11628
11629 ナショナル
/National
4M-106 国民型2号A
4M-111
4M-114
松下電器産業(株)無線製造所
意匠変更
意匠変更
統制額 47.5.16
48.2.19
48.8.28
高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11630
11631
11632
11633 コンサートン
/Concertone
国民型6号 戸根無線(株) 統制額 47.9.25 高一 58-57-47B-12F
11634 双葉/Futaba 国民型2号A単 双葉電機(株) 統制額 47.12.18 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11635 双葉/Futaba 国民型4号B単 双葉電機(株 統制額 47.12.18 高一 6D6-6C6-6ZP1-12F
11636 双葉/Futaba 国民型6号B単 双葉電機(株 大阪分ラスト 統制額 47.12.18 高一 58-57-3YP1-12F

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参考文献

(1)『電波科学』復刊第3号 1947.2 (日本放送出版協会 1947年)
(2)『電波科学』 昭和22年7月号 (日本放送出版協会 1947年)
(3)『電波科学』 昭和23年1月号 (日本放送出版協会 1948年)
(4)『無線と実験』 昭和23年7月号 , 8月号 (誠文堂新光社 1948年)
(5)日本放送協会編 『ラジオ年鑑』 昭和23年版 (日本放送出版協会 1948年)
(6)大井脩三 『増補 ラジオ受信機調整修理法 一般家庭用並に国民型受信機編』 (1947年 誠文堂新光社 1947年)

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