日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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鉱石ラジオ展示室
 
1925-28


CONTENTS

鉱石ラジオ展示室

関連ページ一覧

参考文献


第1展示室HOME


ラジオ展示室


アメリカ製受信機

スライドチューナ式鉱石受信機(復元) (U.S.A. unknown mfr. 1915年頃)

海軍型ルーズカップラを使用した鉱石受信機 Clapp-Eastham Company / F.A.D. Andrea Inc. (U.S.A.) 1920年

手作りの探り式鉱石受信機 (U.S.A. unknown mfr. 1920年頃)

初期の探り式鉱石受信機  (U.S.A. unknown mfr. 1920年代前半)

手作りの探り式鉱石受信機  (U.S.A. unknown mfr. 1920年代前半)

チューナ+探り式鉱石検波器 (U.S.A. unknown mfr. 1920年頃) 

Westinghouse Aeriola Jr. (Type RE) 探り式鉱石受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Company (1921-22)

The Talking Book ブック型鉱石受信機 Listen-in Publishing Company, Mass. U.S.A.

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ドイツ製受信機

Telefunken Arcon DE 鉱石受信機 Telegraphie Telefunken mbH (Germany) 1925-26年

Lorentz type EDAT 25 探り式鉱石受信機 Lorentz Aktiengesellschaft (Germany) 1925-28年 8.00RM


英国製受信機

GECoPhone Model No. 1 Type BC1002 探り式鉱石受信機 General Electric Co., Ltd. 1922年

Ariel 探り式鉱石受信機 Graves, J.G. Ltd. (G.B.) 1923-24年

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日本製受信機 (探り式鉱石)

探り式鉱石受信機 メーカ不明 1925年頃 1925年頃 

ideal set + HELLERTON受話器 メーカ不明 1925年頃

手作りの探り式鉱石受信機 メーカ不明 1925年頃

携帯型探り式鉱石受信機 HP. メーカ不明 1925年頃

薄型の探り式鉱石受信機 メーカ不明 1926年頃

日本製受信機 (固定鉱石、メーカ製)

ニューワン鉱石受信機 安良岡ラヂオ研究所 1926年頃 (NEW)

早川式鉱石セットNo.6 + MBK受話器 早川金属工業研究所 1926-27年頃

SPECIAL KM SET 超小型鉱石受信機 Matsuo & Co. Osaka 1925年頃

メトロフォンD3号鉱石セット Wakue Works 1927-29年 3.50円

ニューワンセット(New 1 Set) Type F 安良岡ラヂオ研究所  1929年頃

JOAK優賞牌受領鉱石受信機 メーカ不明(King ?) 1929年頃

長野放送局開局記念鉱石ラジオ 信濃毎日新聞社 1931年

小型固定鉱石受信機 R.S.A. RADIO PRODUCTS 1933年頃

日本製受信機 (固定鉱石、手製/メーカ不明)

手作りの鉱石受信機 手製 1927年頃

固定鉱石受信機 手製 1927年頃

固定鉱石直列式受信機 メーカ不明 1928年頃

固定鉱石受信機 手製 1929年頃

固定鉱石受信機 メーカ不明 1929年頃

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鉱石受信機用関連機器

Brown Microphone Amplifier マイクロフォン増幅器 S.G. Brown Ltd. London W. 1925年頃

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解説:放送のはじまりと初期のラジオ

外国製電池式真空管受信機展示室


日本製電池式真空管受信機展示室

型式証明受信機及び付属品

初期のスピーカ展示室

レシーバ展示室

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アメリカ製受信機


スライドチューナ式鉱石受信機(復元) (U.S.A. unknown mfr. 1915年頃)

ラジオ放送開始以前の長波で無線通信を行っていた時代のアマチュア用鉱石受信機を復元したもの。Kolby's Telegraph School の銘板のある1913年のスライドチューナと、1914年頃のマードック製バリコンを主要部品とし、Pacent No.31型探り式鉱石検波器(これは1920年代のもの)を組み合わせた。付属部品として避雷スイッチとマードック製のフォーンコンデンサを取り付けた。レシーバには当時の米国製TRIMM社のものを組み合わせた。

このようなスライド型チューナは、1910年代前半に可変インダクタンスとして広く使われたが、接触不良が多く、ルーズカップラに置き換えられた。スライド型チューナは、ラジオ放送が始まってから、絹巻線の採用と、接点の改良によって安価なチューナとして復活した。

(委託No. S11108) (柴山 勉コレクション)

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海軍型ルーズカップラを使用した鉱石受信機 Clapp-Eastham Company / F.A.D. Andrea Inc. (U.S.A.) 1920年

スライド式チューナの欠点を改良したのが一次コイルの内側にスライドできる二次コイルを納めた「ルーズカップラ」である。一般的なルーズカップラは、一次側にスライド式を併用するが、海軍型(Navy type)と呼ばれるルーズカップラは信頼性の低いスライド型を避けて、多くのタップを出してスイッチで切り替える構造としている。この受信機は、FADAの探り式鉱石検波器を組み合わせている。

(委託No. S11078) (柴山 勉コレクション)

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手作りの探り式鉱石受信機 (U.S.A. unknown mfr. 1920年頃)


放送開始以前のものと思われるアメリカ製の鉱石受信機。同調バリコンはなく、アンテナコイルの被覆を剥いだ面をスライダーでショートすることで周波数を変える。中央の角型の台のカップに鉱石を入れて、アームに付けた「猫髭(失われている)」で探りながら受信できるポイントを探すというもの。コイルの左側がアンテナ、アース端子、検波器の右がレシーバ端子。

もっともプリミティブな受信機といえる。

(所蔵No.11535)

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初期の探り式鉱石受信機  (U.S.A. unknown mfr. 1920年代前半)

 

アメリカで放送改組直後に使われたと思われる手作りの鉱石受信機。同調バリコンはなく、アンテナコイルの被覆を剥いだ面をスライダーでショートすることで周波数を変える。コイルの前の台に探り式鉱石とレシーバの端子がある。アンテナ、アース端子はコイルの両端に設けられている。

もっともプリミティブな受信機といえる。

(所蔵No.S11079) 柴山 勉コレクション

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手作りの探り式鉱石受信機  (U.S.A. unknown mfr. 1920年代前半)

真空管式受信機並の大きさのアメリカ製鉱石受信機。箱の作りから見てアマチュアが作ったものと思われる。この受信機もバリコンはなく、正面のダイヤルはコイルのタップ切り替えである。左右の箱にはリード線、レシーバなどを収納していたと思われる。パネル右上に探り式鉱石検波器がある(現在はゲルマニュームダイオードがはんだ付けされている)。

(所蔵No.11533)

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チューナ+探り式鉱石検波器 (U.S.A. unknown mfr. 1920年頃)

 

 

アメリカで放送が始まった頃の鉱石受信機。バリオカプラを使ったチューナと探り式鉱石検波器を組み合わせて使用する。メーカは不明だが、マルコーニ社のライセンスを示す銘板が残っている。チューナと鉱石検波器が、本来の組み合わせであったかどうかは不明である。

(所蔵No.11805)

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Westinghouse Aeriola Jr.(Type RE) 探り式鉱石受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Company (U.S.A. 1921-22) $25

 

アメリカで放送開始直後にウェスチングハウスが発売した探り式鉱石受信機。バリコンはなく、2つのコイルの角度を変えて選局するバリオメータを採用している。この機種はベストセラーとなった。1922年にブランドがRCAのRadiolaに統一され、Radiola Juniorとなった。日本ではNECがN.E.式L-C型ラジオ受信機として国産化した。

(所蔵No.11720)

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The Talking Book ブック型鉱石受信機 Listen-in Publishing Company, Mass. U.S.A.

 

本の形のケースに組み込んだユニークな鉱石ラジオ。表裏の見返しには取り扱い説明が書かれているが、本の前書きやあとがきに見えるような体裁にしてある凝った造りである。会社名からして出版社のような名前であり、会社全体でブック型ラジオのコンセプトに合わせてあることがわかる。内部には本の厚さに合わせて変形させたコイルがあり、スライダで同調する。アンテナとアースはもちろん必要だが、本を開いて読むようなスタイルでレシーバをつないでラジオを聞くという洒落た製品である。

(所蔵No.S11075) 柴山 勉コレクション

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ドイツ製受信機


Telefunken Arcon DE 鉱石受信機 Telegraphie Telefunken mbH (Germany) 1925-26年

 

ドイツを代表する無線機メーカであるテレフンケンの鉱石ラジオ。パネル正面のホットケーキダイヤルの上に鉱石のホルダがある。今は固定鉱石が取り付けられているが、発売当初はここに探り式鉱石を取り付けていた。左側にアンテナとアース端子、右側にレシーバの端子が設けられている。並べて接続できる同じ形のアンプNV、NZが用意されていた。自社製のレシーバEH333を組み合わせて使用する。

(所蔵No.S11080) 柴山 勉コレクション

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Lorentz type EDAT 25 探り式鉱石受信機 Lorentz Aktiengesellschaft (Germany) 1925-28年 8.00RM

ドイツ製の小型鉱石ラジオ。正面にレシーバのジャックが2組あり、背面にはアンテナとアース端子がある。奥のコネクタに探り式鉱石検波器のユニットを取り付けて使用する。

(所蔵No.S11074) 柴山 勉コレクション

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英国製受信機


GECoPhone Model No. 1 Type BC1002 探り式鉱石受信機 General Electric Co., Ltd. 1922年

 

英国で放送が始まった頃の鉱石受信機。当時英国では、国産品のBBC認定品しか使用できなかった。このため「BBCマーク」が付けられている。探り式鉱石とバリオカプラを使用する初期の鉱石ラジオである。これもBBCマーク付きのS.G.Brown type F レシーバが付属している。この英国の「BBCマーク」制度と全国鉱石化の方針は、日本の型式証明制度と全国鉱石化に大きな影響を与えた。

(所蔵No.m11119) 愛知県、太田様寄贈

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Ariel 探り式鉱石受信機 Graves, J.G. Ltd. (G.B.) 1923-24年

 

英国でBBCが放送を始めたころの鉱石ラジオ。ガラスのチューブに入った探り式鉱石検波器が使われている。巻き数の少ない簡単なスパイダーコイルと大型のバリコンで構成されている。簡単な回路だが、基本的に地域に一つしかないBBCを受信するだけであれば問題なかったのだろう。パネル左側のポケットにはレシーバを収納するが、失われている。

当時、英国では日本の型式証明制度の元になったBBCライセンス制度が実施され、英国製の認証を受けたラジオでしか聴取許可を受けられなかった。認証されたラジオには「BBCマーク」が表示された。BBCマーク付きのラジオは割高で制度の評判は良くなかった。この機種は一流メーカ製だがBBCマークがない。当時は自作のラジオで聴取許可を受ける"experimenter's lisence" の制度もあり、この場合はBBCマークは不要だった。このようにBBCマーク制度には抜け道があり、BBCマークがないラジオも多かったようである。

(所蔵No.11A197)

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日本製受信機 (探り式鉱石)


探り式鉱石受信機 メーカ不明 1925年頃 

 

日本製の初期の探り式鉱石受信機。造りは良く、メーカ品か手作りかは不明である。蓋の裏に放送開始直後の東京放送局の時間表が貼ってある。

組み合わせたレシーバは同時代の沖電気のもの(沖式六号)である。

(所蔵No.S11015 / S10006) 柴山 勉コレクション

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ideal set + HELLERTON受話器 メーカ不明 1925年頃

日本製と思われる初期の探り式鉱石ラジオと、ドイツ製と思われる両耳式レシーバ。いずれもメーカは不明である。
コイルの側面の被覆をはがしてスライダを摺動させることでインダクタンスを変化させて同調を取る。バリコンはない。

(所蔵No.11A094)

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手作りの探り式鉱石受信機 メーカ不明 1925年頃

放送開始の頃にアマチュアが手作りしたと思われる鉱石ラジオ。粗末な木箱に入れられている。このパネルが上を向いたデザインは、初期の鉱石受信機によく見られたスタイルである。発見時は固定鉱石用のホルダが付けられていたが、部品の年代を考慮して当館で探り式に直した。その他の使用部品は、昭和初期のバリコンとスパイダーコイルだが、ともに当時改造されたものと思われる。本来は、木箱の底に大型のソレノイドコイルを取り付けたと思われる穴が残っている。このデザインは、初期の鉱石受信機によく見られたスタイルである。

本来は蓋があったと思われるが失われている。ケースの左側面が破損していたため修復した。

(所蔵No.11A072)

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携帯型探り式鉱石受信機 HP. (日本製 1925年頃) メーカ不明

 
(左) ケースふたを開いたところ (右) パネルを外して裏返したところ

日本製の探り式鉱石受信機。 小型のトランクケース型で、携帯できる構造になっている。

(所蔵No.11A006)

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薄型の探り式鉱石受信機 メーカ不明 1926年頃

薄型のケースにまとめられた日本製の探り式鉱石セット。レシーバを2個接続できるようになっている。

(所蔵No.S11001) 

柴山 勉コレクション

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日本製受信機 (固定鉱石、メーカ製)


ニューワン鉱石受信機 安良岡ラヂオ研究所 1926年頃

 

片耳レシーバに鉱石ラジオを組み込んだ小型のセット。取っ手部分に初期の固定鉱石を組み込んでいる。手持ちで携帯して使えるようにできているが、かなり放送局に近いところでないと実用にならなかっただろう。

(所蔵No.11A310)

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早川式鉱石セットNo.6 + MBK受話器 早川金属工業研究所 1926-27年頃

 

早川徳次は関東大震災でシャープペンシルの事業を失い、大阪に移って早川金属工業研究所を立ち上げ、ラジオの製品化に取り組んだ。この鉱石ラジオは、その最初に製品化されたものの一つと考えられる。シャープペンシルにちなんでラジオもシャープラジオとする予定であったが、商標登録に時間がかかり、初期の製品には早川の"T"マークがあるのみで、シャープの文字はない。当時としては珍しいアルミパネルが使われているあたりは、金属加工の技術が高かった同社らしい仕上げである。バリコンとコイルのタップ切替を併用する比較的高級なタイプのセットだが、他社製品に比べて低価格で発売したため、よく売れたという。レシーバは普及品の"MBK"が組み合わされている。

本機の同調ツマミは、オリジナルでない大型のものが付いていたので、サイズが合うものに交換した。

(所蔵No.11A119)

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SPECIAL KM SET 超小型鉱石受信機 Matsuo & Co. 1926年頃

 

直径5㎝ほどしかない小型鉱石受信機。FOXTONに代表される固定鉱石を上のホルダに入れて使用するが、失われている。鉱石ホルダの反対側にレシーバの端子があり、背面にアンテナとアース端子がある。内部は電線を毛糸玉のように丸めて押し込んだだけでコイルとしている。同調回路はなく、アンテナのタップ切替で感度を調整する。放送局が1つしかなかったのでこれでも実用になったのだろう。

(所蔵No.S11075)  柴山勉コレクション

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メトロフォン(Metrophone)D3号鉱石セット Wakue Works  1927年 3.50円

 

 

昭和2年の番組表が貼られているメーカ製の鉱石セット。初期の細長い固定鉱石が使われている。バリコンはなく。コイルの側面を摺動して調整する。本機は未使用品らしく、オリジナルのパッケージに入っていたが、箱のデザインはアメリカ製品をコピーしたように見える。

この時代は舶来品らしく見せるために英語で説明が書いているようなものがよく見られる。

(所蔵No.S11004) (柴山 勉コレクション)

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ニューワンセット(New 1 Set) Type F 安良岡ラヂオ研究所 1929年頃

 

宝石箱型鉱石ラジオの代表的なもの。この宝石箱型の鉱石ラジオは日本ではよくみられるが海外には少ない。小型で携帯性に優れるが、アンテナやアースが必要なため、ポータブルというわけではない。

(所蔵No.S11051)  柴山勉コレクション

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JOAK優賞牌受領鉱石受信機 メーカ不明(King ?) 1929年頃

 

日本特有の宝石箱型鉱石ラジオの一つ。蓋の裏のラベルに、表に「賞」と「JOAK」の文字、裏に愛宕山の東京放送局舎が描かれたメダルの写真とともに「JOAK優賞牌受領」とある。なんらかのコンテストのようなものがあったと思われるが、詳細は不明である。メーカは不明だが、放送博物館には、同じメダルと優賞の文言を描いたKing Crystal の製品と、これと同じくメーカの記載がなく、バリコンを追加してツマミが2つあるモデルが所蔵されている。

重ねたスパイダーコイルをスライドさせてインダクタンスを可変する「スパイダーバリオメータ」を使用している。この部品が特許と実用新案を取ったと思われ、番号が記載されている。この番号の公報はまだ確認していない。

(所蔵No.1A276)

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長野放送局開局記念鉱石ラジオ (日本製 1931年) 信濃毎日新聞社

 

1931年3月8日の日本放送協会長野放送局(JONK)に併せて、地元の新聞社、信濃毎日新聞社が配った鉱石受信機。地元に放送局が開局するまでは、東京や名古屋などの遠隔の局を受信するしかなく、高価なラジオが必要で、ラジオの普及の障害となっていた。1931年には、すでに交流式の真空管式受信機が主流となっていたが、放送協会は、地方の放送局設立の目的としてどこでも鉱石受信機で放送を受信できる環境を作るという「全国鉱石化」の旗印をおろしていなかった。

長野放送局誘致運動を進めてきた信濃毎日新聞社は、開局記念に併せて、信毎本社を通じて聴取申し込みをした3か月以上購読の読者および新規購読者にレシーバ付きの鉱石受信機を無料提供する協賛イベントを実施した(7)(8)。このセットは、放送局が設置された長野市に近い小諸にあったものという。信濃毎日新聞が開局の記念品として配ったもの。

記念品として安価であることと、簡単なラジオで地元の放送を聞くことができるという意味で用意されたものと思われる。

このセットは鉱石受信機としては最も簡単なもので、スパイダーコイルのタップを切り替えることで同調を取るタイプである。さすがに不便になったらしく、バリコンが追加されていた。しばらくの間、実用品として使われたようである。

後から追加されたバリコンは当館で取り外した。

(所蔵No.11925)

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小型固定鉱石受信機 R.S.A. RADIOPRODUCTS 1933年頃

 

宝石箱スタイルの小型鉱石ラジオ。フィルムを使ったセミコンとハネカムコイルが使われていることから、1930年代前半の製品と思われる。折り畳み式の無名の小型レシーバが付属している。すでに真空管ラジオが低価格になって普及していた時代のメーカ製鉱石ラジオである。

本機は、探り式鉱石検波器が付いた状態で発見された。この状態ではふたが閉まらず、明らかにオリジナルでないと判断できるので、同時代の固定鉱石のホルダに交換した。

上の写真では、撮影用に、戦後のFOXTON鉱石を付けている。

(所蔵No.11A062)

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日本製受信機 (固定鉱石、自作)


手作りの鉱石受信機 手製 1926-28年頃 

手製の鉱石受信機。箱も手作りと思われる。中の部品に合わせて配置したらダイヤルの配置が不ぞろいになってしまっている。

不格好ではあるが手作りの味が出ていてほほえましい。

(所蔵No.S11006) (柴山 勉コレクション)

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固定鉱石受信機 手製 1926-28年頃

日本製の最も簡単な鉱石受信機。FOXTONに代表される固定鉱石を上のホルダに入れて使用する。日本では放送開始直後によく使用された。バリコンはなく、コイルのタップのみで選局する。キャビネットは粗末で、工作が粗雑であり、素人の組み立てと思われる。

本機は使用部品から1927(昭和2)年頃のものと思われる。鉱石検波器は失われている。

(所蔵No.11482)

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固定鉱石式受信機 手製 1926-28年頃

 

日本製の最も簡単な鉱石受信機。FOXTONに代表される固定鉱石を上のホルダに入れて使用する。日本では放送開始直後によく使用された。バリコンはなく、スパイダーコイルのタップのみで選局する。

本機は使用部品から1928(昭和3)年頃のものと思われる。

(所蔵No.11240)

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固定鉱石受信機 手製 1926-28年頃

 

日本製の鉱石受信機。FOXTONに代表される固定鉱石を左上のホルダに入れて使用する。日本では放送開始直後によく使用された。この斜めパネルにホットケーキダイヤルのデザインは最もよく見られるもので、1930年代後半まで製造されていた。

(所蔵No.11502)

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固定鉱石直列式受信機 メーカ不明 1928年頃

固定鉱石を2個直列にして出力の増大を図ったラジオ。電波が強い場所であれば、効率の良いホーンスピーカを鳴らすこともできた。「全国鉱石化」計画を推進していた放送協会としては、強電界地域で真空管式受信機を使わなくてもスピーカが鳴る形式として推奨していた。

(委託No.S11096) 柴山 勉コレクション

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鉱石受信機用関連機器


Brown Microphone Amplifier マイクロフォン増幅器 S.G. Brown Ltd. London W. 1925年頃

 

この真空管を使わないアンプの動作原理は、入力側にカーボンマイクを設け、ラジオの出力をマイクのコイルに接続し、音声信号でコイルを駆動するとカーボンマイクのインピーダンスが変化する。このマイクを低周波トランスの一次側に接続することで、二次側の昇圧された電圧でスピーカを鳴らすというものである(9)。カーボンマイクに電流を流すための電池が必要である。

この「増幅器」のトランス二次側に電源はなく、単なる昇圧トランスである。マイクの出力電圧が入力電圧より大きくなっていれば増幅しているといえなくもないが、エネルギーは大きくなっていない。厳密には増幅器ではないだろう。インピーダンスが高く、電流を必要としないホーン・スピーカだからこそ成り立つ機器である。

S.G. Brown社は、このアンプを内蔵したホーン・スピーカも作り、Crystal Vox と称して販売した。

(委託No. S46001) 柴山勉コレクション


参考文献

1)浦部信義 「社団法人名古屋放送局の成立」 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会編 ゆまに書房)

2)向後英紀 「ラヂオ放送の夜明け JOAK東京放送局誕生まで」 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会編 ゆまに書房)

3)電波監理委員会編 『日本無線史』 第11巻 (電波監理委員会 1951年)

4)平本 厚 『戦前日本のエレクトロニクス』 (ミネルヴァ書房 2010年) Amazon.co.jp で購入する

5)Radio Manufacturers of 1920's Vol.1-3, Alan Douglas, Vestal Press (U.S.A.) 1991 Amazon.co.jp で購入する Vol.1 Vol.2 Vol.3

6)鎌田幸蔵 『雑録 明治の情報通信』 (近代文芸社  2008年) 1,300円 Amazon.co.jp で購入する

7)「長野放送開局記念 信濃毎日の協賛奉仕」『信濃毎日新聞』昭和6年2月19日朝刊社告 (信濃毎日新聞社 1931年)

8)南 利明 「戦前ローカル放送の軌跡~JONK(長野)小史~」『NHK放送文化研究年報 第24集』 (日本放送出版協会 1979年)

9)丸毛登 吉田晴 『鉱石受信機』 (オーム社 1927年)

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