日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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初期の日本製真空管式受信機
1925-28


CONTENTS

ラジオ展示室

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参考文献


第1展示室HOME


  展示室目次自作またはメーカ不明


単球式受信機 メーカ不明 1925年頃

2球再生式受信機 メーカ不明 1925年頃

3球再生式受信機 メーカ不明 1925-26年頃

4球再生式受信機 メーカ不明 1925年頃

高周波2段5球受信機 メーカ不明 1925年頃

2球再生式受信機 メーカ不明 1927年頃

3球再生式受信機 メーカ不明 1927年頃

4球再生式受信機(福島県白河) メーカ不明 1927年頃

ブローニング・ドレーキ式5球受信機 メーカ不明 1928年頃

ニュートロダイン改造4球レフレックス式受信機(松本市) メーカ不明 1928年頃

3球再生式受信機 メーカ不明 1928年頃

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展示室目次:メーカ品


RADIODYNE 5球ニュートロダイン受信機 GYOKUDENSHA/玉電社 1925年頃

アイフォンIII型(AI-PHONE) 受信機改造並四受信機  愛知時計会社 1925年頃、1930年頃1次改造、1935年頃2次改造 150.00円

トムフォン(Tomphone) 4号型 3球式受信機 東京無線電機(株)  1927年

カワコ(Kawako) ホーンスピーカ メーカ不明 1927年

ジュノラ(JUNOLA)6D型スーパーヘテロダイン受信機 芝浦製作所  1927年頃

Halodyne 5球ニュートロダイン受信機 金萬電気商会 1929年

ナショナル(National) 5球ニュートロダイン受信機 双葉商会電機工作所 1926年頃

TRC No.35 トライヤダイン 3球レフレックス式 徳田商店(卸元) 1928年頃 卸26.00円

野路 5球超ブローニング・ドレーキ受信機 野路ラヂオ研究所 1928年

三田III型レゼノフレックス装置大型 3球レフレックス式 三田無線研究所 1925年頃 35.00円(球別、本体のみ) (NEW)

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(別ファイル)

解説:放送開始期のラジオ

鉱石受信機


型式証明受信機及び付属品

外国製電池式受信機

初期のスピーカ展示室

レシーバ展示室


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ラジオ展示室:自作またはメーカ不明


単球式受信機 日本製 メーカー不明 1925年頃

  
   正面の写真(左)と、天部のマーク(右)
 

TUBE: UV-201/A

形式証明時代の、初期の国産ラジオの特徴を残す単球受信機。パネルのデザインは川喜多B-10(形式証明八号)の左右を逆にしたものに近い。天部に写真のような"RADIO"の文字をホーンスピーカ型に図案化したマークがあり、メーカ品と思われるが、箱、パネルなどの造りは粗雑である。

本来、波長切り替えを持つ再生のない単球受信機だったが、感度を上げるためにバリオカプラを使った再生式に改造されている。パネルのフィラメント確認用のぞき窓の位置から、本来はUV-201/Aを使っていたと思われるが、消費電力を下げるためにUV-199に改造されていた。

当館で、真空管ソケットをUV型に交換し、UV-201(Radiiotron) を取り付けた。

(所蔵No.11A001)

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高周波2段5球受信機 メーカ不明 1925年頃

  

UV-201類似の国産球(フィラメント4V TSV ブランド)

高周波2段、低周波2段の5球式受信機。再生は使用していない。七欧商会のハネカムコイル、坂本製作所製と思われるトランスなど、国産の部品で組み立てられている。真空管は初期の真鍮ベースで天部に封口を持つ初期のタイプで、TSVのマークがある。一見UV-201Aのように見えるが、フィラメントが4V 0.25A で、円筒型のプレートを持つ独自規格の国産真空管である。バッテリーケースを背面に持つ珍しい構造のキャビネットに収められている。

本機は、蓋と真空管が1本失われている。

(所蔵No.11977)

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2球再生式受信機 日本製 メーカー不明 1925年頃

  

TUBES: 2- UV/UX-201A

グリッド検波+低周波1段の最小限の規模の真空管式セット。

使用されている部品の特徴から、放送開始の頃の初期のセットと思われる。

本機は、パネルを押さえる桟が失われている。

(所蔵No.m11033)  旧ふくやまラヂオ博物館コレクション

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2球再生式受信機 日本製 メーカー不明 1927年

  

UX-301A(TOYO)(201Aと同じ)を2本使うグリッド検波低周波1段の小型受信機。パネルに「M」のマークがあり、「C2714」の製造番号が内部に刻印されていることからメーカー製と思われる。スパイダーコイルの距離を変えて再生を調整するバリオカプラを使用している。このセットは中国大陸で使用されていたらしく、内部に「上海、大連受信機検査印」が押されている。

本機はスパイダーコイルがシャフトから脱落している。

(所蔵No.11409)

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3球再生式受信機 日本製 メーカー不明 1925年頃

  

TUBES: 3- UV-201A

放送を開始した頃の小型3球受信機。スパイダーコイルの角度を変えて再生調整を行う。

写真左側の低周波トランスは昭和初期に交換されたものである。

(所蔵No.11605)

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3球再生式受信機  日本製 メーカー不明 1925-26年頃 

  

TUBES: UX-201A X3

日本無線製のバリオカプラを使った再生検波+低周波2段の構成の受信機。N.Hの表示のあるバーニヤ式ダイヤルは七欧無線電気商会の製造元と考えられる七原無電商会(七原商会とする資料もある)の製品。真空管はスタンレー電球製のものが使われている。使用部品から大正期に組み立てられたと考えられる。真空管を含めてオリジナルが完全に保たれていることから見て、放送開始初期に購入され、短期間でエリミネータ受信機などに買い替えられて、そのまましまいこまれたものと思われる。

(所蔵No.11976)

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4球再生式受信機 (日本製 メーカー不明 1925年頃

 

 

大正期の特徴を残す放送開始時の4球受信機。UV-201Aを4本使用する。輸入品を含む高級な部品を使ってしっかりと作られている。ソレノイドコイルにスパイダーコイルを組み合わせて再生をかけている。

当初ニュートロダインを組むつもりで計画が変わったのだろうか。右端のバリコンは接続されず、遊んでいる。

(所蔵No.11212)

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4球再生式受信機(福島県白河) 日本製 メーカー不明    1927年頃

  
  外観(左)と、UX-201Aに貼られたラベル(左は昭和6年8月28日の日付ラベル)
 

TUBES: UX-201A (CYMOTRON) x4, LL-201A(NDK),

大正末期から昭和初期の典型的なラジオ。パネルや部品のレイアウトはクロスレーのトライヤダインに近いが、このセットはクロスレーのようなレフレックスではなく、4球再生式である。中央のツマミとバリコンが左右と違うことから、本来3球式で組み立てたものの性能が不十分で、後から4球式にされたかもしれない。

多くのこの時代のラジオ同様、このセットにも改造の跡が見られる。再生の効き方を改善するためか、パネルの中央右寄りにミゼットバリコンが追加されている。ツマミと部品の形状から、この改造は1930年代前半に行われたと思われる。中央下部のツマミは両方ともレオスタットだが、左側はツマミが失われ、ターミナル用のツマミで代用されている。中央奥に、C電池用の手製のターミナルがあり、外からリード線を接続するようになっているが、現在はショートされている。B電池のタップでバイアスをかける方式に変更されたものと思われる。

真空管は1本だけが茶色ベースの古いもので、他の3本は昭和6年のラベルが付いたサイモトロンのものに交換されている。3本の日付のラベルは全て昭和6年だが、5月、8月、12月と、日付がすべて異なっている。いずれの真空管にも管壁に"OTAYAYAKUTEN (大田屋薬店?)", "SHIRAKAWA" の文字と、店主らしい肖像が描かれた切手状の立派なラベルが貼られている。

本機は、福島県白河市の、東日本大震災で損壊した土蔵の解体準備中に発見された。真空管のラベルからも、白河で使われていたものと考えて間違いない。放送開始当時、福島から4球式で東京放送局を受信するのはかなり厳しかったと思われる。これほどのラジオを購入できるなら、最初から5球ニュートロダインとしていただろう。このラジオは、1927(昭和2)年に建設され、翌1928年に放送を開始した仙台放送局を受信するために1927年に用意されたとみて間違いないだろう。

真空管に貼られたラベルが「大田屋薬店」を意味するとすれば、薬屋でラジオ部品が売られていたのだろうか?真空管が高価だった昭和初期には、修理の際に一流メーカ品の真空管を粗悪品の安物に交換されてしまうようなこともあった。このため持ち主が名前や日付を入れることもあった。このラベルはそのためかもしれない。

(所蔵No.m11054)  長野県東筑摩郡 滝澤様寄贈

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ブローニング・ドレーキ式5球受信機 メーカー不明 1928年頃

  

TUBES: 5- UX-201A

ブローニング・ドレーキ(ドレーク)方式を採用した5球の比較的高級な受信機。この方式はニュートロダイン式高周波増幅と再生検波を組み合わせた回路で、特許に触れる可能性が高いことから大メーカーはほとんど手がけなかった。本機も小規模なメーカーかアマチュアの自作と思われる。

一流メーカーの部品が使われ、配線なども手際が良い。木の板上に部品を固定し、裸線を直角に折り曲げて配線する、当時の一般的な配線方法で作られている。

組み合わせられているスピーカーはナナオラのフラワーボックスである。

(所蔵No.11612)

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ニュートロダイン改造4球レフレックス式受信機 日本製 メーカー不明 1928年頃

  

 

TUBES: 4- UX-201A

長野県松本市中心部の商家の蔵から発見された初期のラジオ。家具を商っていたこの家の当時の主人が技術に明るく、手作りしたものといわれる。このセットには何度か作り直された形跡があり、配線と部品配置が変更されている。当時、松本市から東京、名古屋、大阪しかなかった放送局を受信しようと思えば、ニュートロダイン式以上が必須であった。ニュートロダインは通常5球式になるが、このセットでは本来5球だったものを修理の際にレフレックス方式として真空管を1本減らしている。低周波トランスもこの時に交換されたと思われる。

本機のパネルには加工した時のケガキ線が残っている。傷つけないように裏側に施すのだが、表裏を間違えやすい。アマチュアが良くやるミスである。

(所蔵No.m11043)  松本市 渡辺様寄贈

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3球再生式受信機 メーカ不明 1928年頃

 3球再生式受信機外観 3球再生式受信機の内部

3- UX-201A

バリオカプラを使った再生検波と2段増幅を組み合わせた簡単な受信機。このセットは部品の年代から判定すると1928年頃のもののようだが、左右のバリコンとツマミ、および中央のソケットのメーカが異なる。一度に部品を買いそろえたのなら、同じ枚数の2つのバリコンのメーカが違うということはないだろう。検波回路と初段の低周波増幅には一世代古い時代の部品が使われている。

想像に過ぎないが、放送が始まった頃にUV-201Aを使った2球式のセットを組み立て、解体して部品を追加してこの新しいキャビネットを購入して3球式を組み立てたのではないかと思われる。

(所蔵No.11A252)

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ラジオ展示室:メーカ品


RADIODYNE 5球ニュートロダイン受信機 GYOKUDENSHA/玉電社 1925年頃

 

  

TUBES: UV-201A UV-201A UV-201A UV-201A UX-112A

放送開始初期の日本製ニュートロダイン受信機。教科書どおりの典型的なレイアウトである。低周波トランスは失われているが、他の部品は主に国産品が使われている。メーカは、長野県諏訪郡平野村(現長野県岡谷市)にあった会社と思われる。

中央のツマミはオリジナルではない。パネル左下が割れているが、布を当てて木材で裏打ちして補修してあり、かなり古い破損の跡と思われる。

(所蔵No.11954)

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アイフォンIII型(AI-PHONE) 2球式受信機(改造並四受信機) 愛知時計(株) 1925年頃、1930年頃1次改造、1935年頃2次改造、 150.00円(球なし)

 
(左)オリジナルのホーンスピーカ内臓の電池式受信機、元の部品は何もない。(右)蓋の裏のマーク


販売元の中央放電機(株)カタログより

 
       (左)1930年頃に追加された交流式受信機部のキャビネット (右)元のキャビネットを上に載せてねじくぎでつないである。


1935年頃にアリア27B 型シャーシに交換

この受信機は、ラジオ放送初期のスピーカ内臓型2球式電池式受信機である。同社のアイフォンII型受信機と愛知高声器を大型のキャビネットに収めたもの。本体のみで150円、真空管、電池、両耳レシーバ、アンテナ、アース線一式で210円という高価なものだった。メーカーの愛知時計(株)(現:愛知時計電機)は時計メーカから軍用機器の製造、輸入を通じて無線機の技術も持ち、名古屋放送局設立に大きな役割を果たした(1)。放送開始時にはラジオセットの製造にも乗り出し、アイフォンⅠ型単球受信機が、型式証明第57号を取得している。この大型セットは、型式証明が廃止された後のものと思われる。

型式証明受信機はおしなべて高価であったが、それでも輸入品より安いことからビジネスチャンスがあった。しかし、型式証明制度が廃止されてからは、ラジオセットの値崩れが激しく、自作や中小メーカとの価格競争に敗れるメーカが続出した。愛知時計電機もこの時期にラジオセットの製造から撤退したと思われる。同社はガスメータや水道メータなどのメーカとして存続している。

この高価な受信機は、2回にわたって大きな改造を受けた。最初は1930年頃、オリジナルの中身を全て取り除き、新たにキャビネットをあつらえて製作している。このキャビネットにエリミネータ受信機を組み込み、元のキャビネットの床板を取り除いて積み重ね、木ねじで接続してある。スピーカはホーンスピーカからセンターのマグネチック・スピーカに交換された。内部は左右対称に作られ、赤と青のパイロットランプが付けられている。これは1931年に東京中央放送局で始まった二重放送に対応するために同調回路を二つ備えた受信機に良く見られたものである。回路は201Aと226を組み合わせたものであったと思われる。

このような二重放送対応受信機は部品点数が多いだけで使いにくく、すぐに時代遅れになった。1935年、旧式なエリミネータ受信機の部品はデザイン上外せないバリコンと同調つまみを除いて全て取り外された。そしてここにミタカ電機製の市販シャーシを組み込んで、227-26B-26B-12Fの並四受信機となった。このシャーシのアンテナコイルとチョークコイルは、戦後交換されている。このセットはほぼ5年おきに大改造を受けることで、急激な技術の進歩に追いつきながら30年近くにわたって使われたことになる。

(所蔵No.11830)

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トムフォン(Tomphone) 4号型 3球式受信機 東京無線電機(株) / カワコ(Kawako)・ホーン・スピーカ 1927年

  
外観(左)とシャーシ(右)、スピーカの脚はオリジナルではない。内部配線はオリジナルではない
   
ふた中央のロゴ(左)と本体内部の銘板(中)、トランスの銘板(右)、もう1個のトランス(初段)は1:6である。
  
本体のラベル(左)とスピーカのラベル(右)、保障期間1年と推定すると昭和2年(1927年)製と推定できる。
このラベルからスピーカがオリジナルであることがわかる。番号が連番とすると一月に150枚のラベルを発行していたことになる。
  
ふたの裏の説明書にある回路図(左)と内部接続図、実際のセットとはかなり異なる。

TUBES: 3- UX-201A

放送開始初期の国産3球式受信機。東京無線電機は1922年に東京無線電信電話製作所と帝国無線電信製作所が合併して設立された。当初は逓信省や船舶用の無線機器を製造していたが、1925年にトムフォン受信機およびオリジナルの真空管を発売し、ラジオ市場に参入した。(3) トムフォン受信機は、1号から3号まで型式証明を取っているが、この4号は、型式証明制度が終わった後の製品のため、型式証明番号はない。

型式証明時代の特徴であった波長切替はなくなっているが、認められていなかった再生検波は使用していない。型式証明終了後の放送開始初期の受信機の特徴が良く出ているセットである。同社はこの頃、ラジオ製造から撤退したと考えられる(4)ので、このトムフォン4号は、同社最後のラジオとして良い。同社は後にトムブランドの拡声装置で有名になる。

バリオカプラとバリコンを併用した2段同調回路にグリッド検波、初段6:1、2段目3.5:1のトランス結合2段の低周波増幅という構成である。内部にトランスの銘板と同じTRS(東京理学電機製作所)の印がある保証票があり、日付が3年9月となっている。保障期間が1年だったと推定すると、販売されたのは昭和2年(1927年)ということになる。同時に発見されたKAWAKOホーン・スピーカに同じ保証ラベル(日付は3年8月)が貼ってあることから、オリジナルのペアであったことがわかる。

このセットのふたの裏に取り扱い説明と配線図、配置図が印刷された紙が貼ってある。ここに印刷された図面には、バリコンを2個使用し、検波段と、増幅段それぞれ独立した電源スイッチと出力ジャックがあるように記載されている。しかし、実際のシャーシはバリオカプラとバリコンの組み合わせになっているほか、検波出力のジャックはない。回路図では電源スイッチをOFFにするとアンテナとアースを短絡するようになっている。避雷のための配慮であろう。配置図と実際のシャーシの関係でも、部品配置やシャーシそのもののサイズが異なっている。シャーシが大幅に作り直されたという可能性もあるが、パネルの刻印やキャビネットの配線引き出し穴との関係などは良く整合している。保証票の捺印がメーカの東京無線電機でなく、ここに使われているトランスメーカのTRSのものである点は、改造であることを示しているように思える。

いずれにしても、本機は1980年代に解体、修復がなされているため、配線などオリジナルでない部分が多く、元の姿については謎が残る。本機の真空管は失われていたため、サイモトロンUX-201Aを当館で取り付けた。

エボナイト製パネルは褪色している。実際はシャーシ裏のように黒色であったと思われる。

(所蔵No.11895)

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ジュノラ(JUNOLA)6D型スーパーヘテロダイン受信機 (芝浦製作所 1927年頃)

 

  
(左) シャーシの取り付け方がRCAと異なる (右) 背面の注意書き

GE/RCAのライセンスで芝浦製作所がAR-812の日本版として製作したもの。内部構造やダイヤル機構はAR-812とほぼ同じものだがレイアウトが異なり、横幅が少し小さい。自動車が普及していなかった当時の日本では大型のポータブルは意味がなく、ハンドルは付いていない。本家RCA製品の半額程度で販売されたが、それでも大変な高額商品だった。

本機は向かって左側のグリルと縦桟4本が失われている。

(所蔵No.11607)

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Halodyne 5球ニュートロダイン受信機 金萬電気商会/KANEMAN ELECTRIC Co. 1929年

 

  

  

TUBES: 201A-201A-201A-112A-112A

長野県諏訪郡岡谷にあった中小メーカ製のニュートロダイン受信機。高周波段にUX-201Aを3本。低周波段にUX-112Aを2本使用する。このセットは、長野県上伊那郡辰野町の旧家に残されていた。奇跡的に当時使われていたままのバッテリーとホーンスピーカ(Omarブランド)が揃っている。セット内部にも修理や破損の痕跡が無く、ほぼ購入当時の状態を維持している。真空管は1929年8月の日付を打ったラベルの付いたサイモトロン製品で揃っている。これがこのセットの製造年であろう。

バッテリーは"A"電池にユアサRA-2型(6V)、"B"電池にGS BK-80型(90/45/22.5V)、"C"電池に4.5V積層乾電池(メーカ不明)を使用する。A電池は一般的なものだが、B電池は電流が少なく、比較的長持ちするので乾電池が使われることが多く、このように高価で保守が大変な蓄電池が使われることは少なかった。このセットの場合、部品の入手が不便な地方で使用されていたため、充電可能な鉛蓄電池が使われたのではないかと思われる。

キャビネット側面にはコールサインとダイヤルの位置を示す紙片が貼られている。これを見ると、東京、名古屋、大阪、熊本、仙台、広島、札幌という、当時の大電力局全てが記入されていることがわかる。長野県の山間部の町でこれだけ遠方の局が受信できたことは驚きである。ノイズが少なかったのであろう。

また、本機には、アース線とアンテナ線も付属している。アンテナ線(緑色)は直列にマイカドン(日本無線製)を直列に入れた上で、先端に電球用のプラグが付けられている。つまり、電灯線アンテナとして使っていたということである。アース線(赤)の先端にはフォーンプラグが付けられている。このセットの持ち主の家にはすでに電灯線が来ていたということである。このラジオが作られた翌年の1930年頃から本格的に交流式受信機の普及が始まる。相当に豊かだったオーナーは、このセットを改造することもなく仕舞い込み、新型の交流受信機に買い換えたのであろう。

電池式受信機時代の最後のセットといえる。

(所蔵No.11825)

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ナショナル(National) 5球ニュートロダイン受信機 双葉商会電機工作所 1926年頃



TUBES: 5- UX-201A

ナショナル(National)ブランドを松下より前に使用していた大阪の二葉商会のニュートロダインセット。同社は後に特徴的なケース入りのコイルを採用するが、この時は典型的な斜めに配置されたソレノイドコイルを採用している。シャーシとなる板にセルロイドと思われる絶縁板が貼ってある。メーカ品らしく配線などの仕上げは非常に良い。

(所蔵No.11A125)

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TRC No.35 トライヤダイン 3球レフレックス式 徳田商店(卸元) 1928年頃 卸26.00円

 

TUBES: 3-UX-201A

米クロスレー社のトライヤダインは、レフレックスを採用して安価な3球でありながら高感度で人気があり、多くのメーカによってコピーが作られた。このTRCはその中の代表的なもので、本家とレイアウトやサイズが良く似ている。この35型は専用のループアンテナが付属する上級モデルで、天板の穴にアンテナを取り付けるようになっている。このようなループアンテナ付きのモデルは本家のクロスレーにはなく、オリジナルである。

本機は、アンテナが失われている。

(所蔵No.S11061) 柴山 勉コレクション

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野路 5球超ブローニング・ドレーキ受信機 野路ラヂオ研究所 1928年





TUBES: 5X UX-201A

国産のブローニング・ドレーキ受信機。ニュートロダインと再生検波を組み合わせたブローニング・ドレーキ式は、アームストロングとハゼルチンのラジオ界の2大特許に触れる可能性があるため、特におひざ元のアメリカでは特許が適用されないアマチュアの組み立て品やキットがほとんどである。日本でもアマチュアが多く作ったが、これは一流メーカの野路ラヂオが作った例である。日本では特許についてあまり厳格ではなかったのだろう。同社は、オリジナルのブローニング・ドレーキと同じ4球式も用意していたが、これはその上級の5球式である。

幅80㎝もある巨大なセットである。回路的にはニュートロダイン式5球受信機に再生検波を施したものといえる。オリジナルのブローニング・ドレーキは、ベークライトのボビンに巻いた特徴的なコイルを使うが、この機種ではバスケットコイルを採用して再生コイルを同軸に配置するオリジナルに近い構造としている。ラベルの表記がローマ字と怪しげな英語の組み合わせになっているところがほほえましい。詳細は参考文献(7)参照

本機のトランスはオリジナルではない。また、ダイヤルは本来ベルベットバーニア式のものが付くが、通常のダイヤルに交換されているようである。

(所蔵No.S11060) 柴山 勉コレクション

掲載誌:『無線と実験』 昭和3年6月号(広告) 

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三田III型レゼノフレックス装置大型 3球レフレックス式 三田無線研究所 1927年頃 35.00円(球別、本体のみ)



TUBES: 3X UX-201A

計測器メーカとして知られる三田無線研究所が放送開始初期に販売した中級受信機。レフレックスを採用し、高周波1段再生検波低周波2段に相当する。RCAが使っていた「レゼノフレックス」の名称を使っているが、直接の関係はない。中央の再生用バリオカプラを同社は「ブースター」と称した。キャビネットが異なる「小型(25円)」もあった。

本機の低周波トランスはオリジナルではない。

(所蔵No. 11A305)

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参考文献

1)浦部信義 「社団法人名古屋放送局の成立」 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会 ゆまに書房)
2)向後英紀 「ラヂオ放送の夜明け JOAK東京放送局誕生まで」 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会 ゆまに書房)
3)電波監理委員会編 『日本無線史』 第11巻
4)平本 厚 『戦前日本のエレクトロニクス』 (ミネルヴァ書房 2010年)
5)lan Douglas, "Radio Manufacturers of 1920's " Vol.1-3, (Vestal Press (U.S.A.) 1991)
6)鎌田幸蔵 『雑録 明治の情報通信』 (近代文芸社  2008年) 1,300円
7)田口達也 『ヴィンテージラジオ物語』 (誠文堂新光社 1993年)

         

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