日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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外国製電池式真空管受信機
1925-28


CONTENTS

ラジオ展示室

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参考文献

第1展示室HOME


 展示室目次:アメリカ製 


手作り品(Home Brew Set)


単球式受信機 1922年頃

2球再生式受信機 1922年頃


Atwater Kent Manufacturing Co.


Atwater Kent Model 10A No.4550 高周波2段5球受信機  (1924) $104

Atwater Kent Model 20 No.4640  高周波2段5球受信機  (1924-26) $100

Atwater Kent Model 20c (Compact) No.7570  高周波2段5球受信機 (1925)  $ 80

Atwater Kent Model 20c (Compact) No.7960  高周波2段5球受信機 . (1926) $ 60

Atwater Kent Model 30 No.8000 高周波3段6球受信機  (1926-27) $105

Atwater Kent Model 35 No.8100 高周波3段6球受信機  (1926-27) $ 70

Atwater Kent Model 33 No.8930 高周波3段6球受信機  (1927-28) $ 90

Atwater Kent Model 49 高周波3段6球受信機  (1928-29) $ 68


Browning-drake Corpration / National Co., Inc.


Browning-Drake 式 5球再生式受信機 1925年頃

Browning-Drake Model 5R 5球再生式受信機 1926年 $95.00 (NEW)


The Crosley Radio Corporation


Crosley Model 51  2球再生式受信機 (1924) $18.50

Crosley TRIRDYN REGULAR Type No.1121 3球再生検波レフレックス受信機 (1925) $50

Crosley Super Trirdyn Special 3球再生検波レフレックス受信機 (1925) $60

Crosley Model 5-50 5球再生式受信機  (1926) $50

Crosley Super Musicone マグネチック・スピーカ The Crosley Radio Corporation (1925-27) $12.70 


TOP


F.A.D.Andrea, Inc.

FADA model 169A kit  ニュートロダイン5球受信機 (1924) $72 


Freed-Eisemann Radio Corp

Freed-Eisemann NR-5 ニュートロダイン5球受信機  1923年 $150

Freed-Eisemann FE-50 ホーンスピーカ 1924年頃


Chas. Freshman Co. Inc.

Freshman Masterpiece "Franklin Console" 1925年 $115 (with Cabinet), 335.00円(本体のみ)


Gilfillan Bros. Inc.

Gilfillan Model GN-1 ニュートロダイン5球受信機 1924年 $175 / 380.00円

Gilfillan Model GN-2 ニュートロダイン5球受信機 1924年  $175 / 300.00円


A.H. Grebe & Co.,Inc.

Grebe Synchrophase MU1 ニュートロダイン5球受信機 1925年  $155 


Hammarlund Roberts Co.

Hammarlund Roberts 5球再生式受信機 1925年  $60.85 (キャビネット別、キット)


The Colin B. Kennedy Company

Kennedy Model VI 4球再生式受信機 1924年 $105


The Magnavox Company

Magnavox M-4型 ホーンスピーカ 1924年  $25

Magnavox 25型 高声器自蔵高周波2段5球受信機  1925年  $165


RCA Products: Radio Corpolation of America (Include Manufactured by G.E. for RCA)


Radio Sets

Radiola V型 AR-885 鉱石検波/再生検波3球受信機 1922-23年 $132.50 (without Tubes)

Radiola III型2球受信機 1924年

Radiola III-A型4球受信機 1924年

Radiola Superheterodyne AR-812  1924年

Radiola 24 (AR-804) 6球ポータブルスーパー (1925) (「ポータブルラジオのはじまり」にリンク)

Radiola 26 6球ポータブルスーパー (1925-27) (「ポータブルラジオのはじまり」にリンク)

Radiola 25 (AR-919) 6球スーパー (1925-27) $165

Radiola 20 AR-918 高一再生検波5球受信機 (1925-27) $115

Speakers

RCA Model FH Loud Speaker (1923-25)

Radiola Loud Speaker UZ-1325 (1924-25)

Radiola Loud Speaker Model 100 (UZ-915) (1925-27) $39 

TOP


Remler Products: Gray and Danielson Mfg. Co.

Remler (Home brew set manufactured from Kit) 8球スーパー(201A使用) 1925年頃

Remler (Home brew set manufactured from Kit) 8球スーパー(199使用) 1925年頃


Silver-Marshall. Inc.

Silver-Marshall Shielded Six Type 630  高周波3段6球受信機 1926年 $95(kit) 


Ware Radio Corporation

Ware Type T 3球ニュートロダイン 1924年


Westinghouse Electric & Manufacturing Co.

Westinghouse Model RC  3球再生式受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Co. (1922) $130

Westinghouse Aeriola Sr. (Type RF) 単球再生式受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Co. (1922) $75.50 


ラジオ用アクセサリ


ループアンテナ メーカ不明(アメリカ製) 1924年頃

Quali-Tone ループアンテナ Duro Metal Products Co.,  1924年頃 


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  展示室目次:その他の国


ATM "Claritone"  ホーンスピーカ Automatic Telephone Manufacturing Co., Ltd. (U.K.) (1924) 

N&K スピーカ Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃


関連のページ
(別ファイル)

解説:放送開始期のラジオ

鉱石受信機

日本製電池式真空管受信機展示室

型式証明受信機及び付属品

初期のスピーカ展示室

レシーバ展示室


第1展示室HOME  TOP


アメリカ製セット 


単球式受信機 (アメリカ製 1922年頃)

 

TUBES: UV-201/A

バリコンと大型ソレノイドコイルを使った同調回路に3極管UV-201を使用したグリッド検波器をつないだだけの単球受信機。端子類がパネル面に並び、フィラメントの灯り具合を見るための穴が開いているデザインは1920年代前半まで良く見られたスタイル。

もっともシンプルな真空管式受信機といえる。

(所蔵No.11335)

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2球再生式受信機 1922年頃



TUBES: UV-200 UV-201 (CX-201A X2)

アメリカでラジオ放送が始まったころのアマチュアが手作りしたラジオ。真空管式再生検波、1段増幅の基本的な回路である。スパイダーコイルによるバリオカプラは、シャフトやフレームまで木で手作りしている。パネルにターミナルが設けられ、真空管のフィラメントの明るさを確認するためののぞき穴がある古いデザインのセットである。

真空管は失われていたため、当館で取り付けた。

(所蔵No.11A269)

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Atwater Kent Model 10A No.4550 高周波2段5球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co.   (1924) $104

TUBES: 5- UV-201-A

Atwater Kent社は、ラジオの各ステージを円形のユニット化したパーツを販売していた。アマチュアはユニットを買って板に並べて配線するだけでラジオを組み立てることができた。このModel 10は、自社で完成品のラジオとして組み立てて販売したもので、回路規模によっていくつかの種類がある。

当時、アマチュアはパン生地をこねる板を雑貨屋で購入してラジオのシャーシにしたため、このような形態のラジオのことを「ブレッドボード・セット」と呼んだ。現在でも電子回路の実験用の基板のことをブレッドボードと呼ぶのはこれが語源である。この機種は、日本でラジオ放送が始まる前に製造されなくなったため、日本には輸入されていない。

本来、組み立て用のパーツとして発売していたものを完成品としたのは、放送が開始されてラジオの需要が増えたからである。実験を目的とするアマチュアであれば、ブレッドボードに部品を並べただけのラジオが使いやすいが、ラジオが家庭に入って専門知識のない女性や子供が扱うようになると、部品がむき出しのラジオでは取り扱いが難しく、危険ですらある。特に、部屋をきれいに保たねばならない家庭の主婦には不評だった。このため、同社は、このラジオの内容をスマートなケースに収めたModel20を発売するのである。

(所蔵No.11076) 柴山 勉コレクション

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Atwater Kent Model 20 高周波2段5球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1924-26) $100

 

 

TUBES: 5- UV-201-A

Atwater Kent 社は、ラジオの各段をユニット化したものを板の上に並べた、通称「ブレッドボード」、Model 10 が良く知られている。1920年代初頭にアメリカのラジオファンの間で人気となったセットだが、ラジオが一般家庭に普及してくると、扱いにくい部品がむき出しのブレッドボードは嫌われるようになり、同社は1924年に同じ回路でシンプルなマホガニー製ケースに収めた20型を発売した。ブレッドボードも継続販売されたが、これ以降同社の主流はシンプルかつコンパクトなケース入りセットとなった。

真空管は、UV-201の電流を1/4にした201-Aを採用し、高周波2段増幅、低周波2段の5球である。3極管しかない時代、ラジオの感度を上げるには高周波増幅の段数を増やすしかなかった。高周波の多段増幅を安定にする方法に、ハゼルチンのニュートロダイン法がある。アットウォーターケントは、この特許を避けるために、補償コンデンサを使うニュートロダインに対して、各段のグリッドに直列抵抗を入れる方法をとっている。構造はパーツをパネルに付けるようになっていて、シャーシに相当する板は存在しない。同社は扱いやすいケース入りセットを追加したことで生産を大きく伸ばした。

シンプルなデザインで比較的安価だったModel 20は、当時ベストセラーになったが、平凡で特徴のないデザインは現在のアンティークラジオ市場では不人気である。回路は同じでありながら、メカニカルな美しさと個性があるブレッドボードのほうがはるかに人気があり、現在の取引価格も高価である。

(所蔵No.11887)

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Atwater Kent Model 20c (Compact) No.7570 (初期型) 高周波2段5球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1925) $80
Atwater Kent Model 20c (Compact) No.7960 (後期型) 高周波2段5球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1926) $60

 

 
初期型(7570)の内部を示す

TUBES: 5- UV-201A (for No.7570), 5- UX-201A 'for No.7960)

20型(4640)の中身をそっくり半分の容積のキャビネットに収めたモデル。銘板は同じModel 20となっているが、20cまたは20 Compact と呼ばれて識別される。ゆったりした20型に対して、かなりぎりぎりに収められていることがわかる。No.7570の型番を与えられた初期型は1年で16万台あまり販売された。翌年には新型のUX-201Aに対応するためにソケットを変更したNo.7960にモデルチェンジされた。内部の配置や外観に大きな変更は無い。No.7960は1年で8万2千台あまり製造され、20c全体では25万代近い台数となった。

(所蔵No.11888/889)

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Atwater Kent Model 30 高周波3段6球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (U.S.A. 1926-27) $105

 

TUBES: 6- UX-201A

高周波2段の20c型の感度を改善するために初段に高周波増幅を1段追加し、シングルコントロールとした機種。高周波3段低周波2段の6球で、真空管はUX201-Aを使用している。3極管しかない時代、ラジオの感度を上げるには高周波増幅の段数を増やすしかなかった。高周波3段の初段は非同調となっているため効果は低い。高周波の多段増幅を安定にする方法に、ハゼルチンのニュートロダイン法がある。アットウォーターケントは、この特許を避けるために、補償コンデンサを使うニュートロダインに対して、格段のグリッドに直列抵抗を入れる方法をとっている。

当時は2連、3連というバリコンがなかったので、ラジオの操作は非常に難しかった。同社は、バリコンを金属ベルトで連結することでシングル・コントロールを実現した。また、同社製品は非常にコンパクトにまとめられているのが特徴である。この機種でも、部品はぎりぎりのレイアウトにまとめられ、干渉を防ぐためにコイルの角度を90度づつ変えている。モデル30は1年で10万台を超えるベストセラーとなったが、他社からもシングル・コントロールの製品が発売されたため、発売後2ヶ月で$86に値下げされた。シングルコントロールの新型を出すに当たって、同社では、旧型の20cの在庫を大量に抱えていた。30型の配置は20cとほとんど変わらないため、旧型の在庫を解体し、部品を再利用して30型を生産したという。

(所蔵No.11466)

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Atwater Kent Model 35 No.8100  高周波3段6球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1926-27) $70 

 

TUBES: 6- UX-201A

アットウォーター・ケント社が、低価格とするために、鉄板をプレスしたキャビネットを採用した最初のモデル。回路は30型とほぼ同じ高周波3段低周波2段の6球式である。ただし、サイズとコストを抑えるため、ブレッドボード時代から続いた樹脂製の枠型を廃止し、金属フレームを使用したバリコンに変更した。キャビネットを鉄板プレスとしたことによるコストダウンの効果は大きく、30型が$100を超えていたのに対して、$70の低価格を実現できた。シャーシはキャビネットの天井から逆様に吊られている。ソケットの精度が高くなければとても実現できない構造である。

同社はこのモデルで1926年12月に通産100万台の生産を実現した。本機には、1007904のシリアルが刻印されている。35型は同社の電池式受信機の中で最多の生産台数32万台を記録している。帆船メイフラワー号のレリーフを天板に刻印した金属キャビネットのデザインは、1927年12月に発売された交流式受信機37型に引き継がれている。

(所蔵No.11893)

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Atwater Kent Model 33 No.8930   高周波3段6球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1927-28) $90
Atwater Kent Model 49          高周波3段6球受信機 Atwater Kent Manufacturing Co. (1928-29) $68

 
49型の外観と内部(下)
 

TUBES: 6- UX-201A

アットウォーター・ケント社は、30型の感度を改善するために、高周波増幅を1段追加した32型を発売したが高価で不人気だった。このため、同社は6球式の30型の初段に同調回路を追加した33型を発売した。サイズとコストを抑えるため、35型から採用された、金属フレームを使ったバリコンを使用している。コイルもビノキュラー型の新しいものが採用された。

この機種が発売された1927年にはRCAから初の交流受信機Radiola 17が発売された。同社は33型を交流球に変更して外部電源を付けた36型を投入して対抗したが、これは間に合わせに過ぎなかった。同年末には本格的な金属キャビネットの交流機37型、翌年にはベストセラーとなる40型が発売された。電池式受信機は急速に過去のものになったが、同社は33型のパネルの仕上げやツマミの色を変更し、49型とした上で大幅に値下げして1929年まで継続した。銘板や外観の細部が異なるが、基本的に33型と同じものである。

(所蔵No.11890/891)

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Westinghouse Model RC  3球再生式受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Co. U.S.A. 1922年 $130

 

  

TUBES: 3- UV-200/UV-201/UV-201-A/WD-12 (RCA Radiotron)

アメリカで世界最初に設立された放送局、KDKAの母体であるウェスチングハウス社が放送開始時に1921年末に発売した初期のラジオ受信機。独立した製品として販売されていたRA型チューナと当時の最新技術であった再生検波を採用したDA型検波増幅器を1つのケースに収めたもの。この機種は"for Short-Wave"となっているが、受信周波数帯は180-700m(428-1700kHz)で、現代の中波帯に相当する。当時は波長8,000-20,000m(15-37.5kHz)を長波、1,000-8,000m(37.5-300kHz)を中波、1,000m(300kHz)以下を短波と呼んでいて、現代とは異なる。

本機は1922年製の後期型だが、1923年に販売元がRCAに移行したために蓋の裏にRCAのライセンス・ラベルが貼ってある(下段写真右)。本来の銘板には"Licensed for amateur and experimental use only"となっているのに対し、後から追加された銘板には"Licensed for amateur, experimental and entertainment use and only extent indicated in attached notice"と記載されている。放送が開始されたことで"entertainment"などの新たな用途が現れたためと思われる。

(所蔵No.11806)

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Westinghouse Aeriola Sr. (Type RF) 単球再生式受信機 Westinghouse Electric & Manufacturing Co. (1922) $75.50

 

TUBES: WD-11 (RCA Radiotron, later type), A: DC1.5V, B: DC22.5V

ウェスチングハウスが発売した単球受信機。鉱石受信機であるAeriola Jr. の上位機種に当たり、真空管式セットではもっとも簡単なもの。バリコンはなく、同調用固定コンデンサと、同調、再生が一つのボビンに巻かれたバリオカプラで構成される。真空管は、乾電池用のWD-11を1本使用する。低電圧で使えるこの球により、小型のA/B乾電池1個ずつで動作させることができる。

本機の価格は、本体にバッテリー、ヘッドフォン、アンテナキットを含んだものである。まだ放送開始後間もない時期のため、単球受信機といっても高価である。当初ウェスチングハウス自身から発売されたが、1922年以降はRCAが販売するようになったため、ラベル下部にRCAの名前が入っている。この初期モデルのパネルは木製に真鍮の文字盤を組み合わせているが、後期型ではベークライトの文字盤一体型のパネルに変更された。1922年12月に、ブランドがRCA Radiolaに統一されたため、本機の型名は"The Radiola Senior" に変更され、1924年まで製造された。

本機には、後期型のWD-11が取り付けられている。WD-11は、大幅に途中で小型化されたため、本来は球の先端が1インチほどパネルから出る設計だったが、完全にもぐってしまっている。このため最終型でパネルの穴が拡大された。現状では、パネルを外さない限り真空管を抜くのは不可能である。

このセットには、1977年に持ち主がRCAに寄贈を申し出たらしく、ニューヨークのRCA本社から、自社のコレクションがあるとの理由で丁重な断りの手紙が添えられていた。

(所蔵No.11983)

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FADA model 169A kit ニュートロダイン5球受信機 F.A.D.Andrea, Inc. (1924) $72



TUBES: UV-201A X5

真空管のフィラメント用のぞき穴を持つ、典型的な初期のニュートロダイン受信機。

補償コンデンサによる中和により多段高周波増幅を実現するニュートロダイン方式には、ハゼルチンの特許が存在した。しかし、アマチュアの実験はこの特許の実施範囲から除外されていたため、多くのメーカがキットの形で販売した。このFADAのセットもキットで供給されたもので、ニュートロダイン特許の実施を示すプレートがない。

本機は、真空管が失われている。

(所蔵No.11932)

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Freed-Eisemann NR-5型  ニュートロダイン5球受信機 (1923 U.S.A.) $150
Freed-Eisemann FE-50型 ホーンスピーカ Freed-Eisemann Radio Corp. (1924年頃)

 

TUBES: UV-201A X5

3極管の電極間容量Cp-gを補償するために小容量のコンデンサを使用することで多段の高周波増幅を可能にした回路を「ニュートロダイン」方式といい、アメリカのハゼルチンが特許を取り、ラジオの感度を向上させるために広く使われた。 このフリードアイズマン社のNR-5型は初期のニュートロダイン受信機の代表的なもので3極管UV-201を5本使用し、高周波2段、グリッド検波、低周波2段の構成である。補償コンデンサ(ニュートロドン)は真空管のばらつきに対応するために可変式となっている。

後に5極管が広く使用されるようになってニュートロダイン方式は使われなくなったが、補償コンデンサを使う回路はトランジスタの発振防止用に現代のLSIの内部にも使用されている。

(所蔵No.11422/10044)

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Freshman Masterpiece "Franklin Console" スピーカ内蔵5球受信機 1925年 $115 (with Cabinet), 335.00円(本体のみ)





TUBES: UV-201A X 5, Horn Speaker included

米国フレッシュマン社は、ニュートロダイン特許を避けるために、浮遊容量を使って発振を避ける独自の手法を開発し、1924年に低コストの5球TRF受信機「マスターピース」を$60で発売した。翌25年には同じ価格でホーンスピーカを内蔵した5F5型を発売し、ヒット商品となった(5)。このモデルは5F5型の上級機種で、扉の付いたマホガニーの重厚なキャビネットに納められている。この形で「コンソール」と付けられているのは奇妙だが、実際にはサイズを合わせた脚付きのコンソールキャビネット付きで発売されたことから、この名称になった。

フレッシュマンのラジオは、このように窓にダイヤルの目盛が表示される"Window Dial" が特徴だが、初期のカタログには普通のホットケーキダイヤルを付けた写真が掲載されている。実際にはホットケーキダイヤル付きのモデルはほとんど作られていないという(5)。

このモデルは日本にも輸入されたが、日本ではキャビネットはなく、本体のみが輸入された。335円と高価ではあるが、ラジオラ・スーパーヘテロダインの半額程度であり、舶来品のホーン・スピーカが50-70円程度していたことを考えれば割安といえるかもしれない。

フレッシュマン社は交流式への転換に失敗して自動車メーカーのクライスラーの傘下に入り、同じく経営不振に陥っていたフリード・アイズマンと合併してEarl Radioとして生き残りを図ったが、1929年の金融恐慌で経営破たんした(5)。

(所蔵No.11A203)

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Crosley Model 51  再生検波2球受信機 The Crosley Radio Corporation 1924年 $18.50

 

TUBES: 2- UV-201A

低価格のセットを得意としたアメリカ、クロスレー社の2球受信機。端子がフロントパネルに付いた古いデザインである。RCAのRadiola IIIのライバルといえるセットで、当初は同じ価格($35)で発売されたが、量産により半額近い価格に値下げされた。再生検波+低周波1段で、レシーバを駆動する。コストを下げるために同社独特のブック型バリコンが使われている。

本機は1924年7月にマイナーチェンジした後期型モデルである。51型は20万台近く生産されたという。スピーカを駆動するために、専用のアンプ 51A型が用意されていた。

(所蔵No.11804)

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Crosley TRIRDYN REGULAR Type No.1121 再生検波3球レフレックス受信機 The Crosley Radio Corporation 1925年 $50

 

TUBES:3- UV-201A

アメリカの大手メーカ、クロスレーの3球受信機。高周波増幅と低周波増幅を兼用するレフレックス方式と再生検波を採用して少ない真空管で高い性能を実現した。安価なセットでありながら高品質な部品が使われ、部品配置が合理的である。同社はこの方式のラジオを"TRIADYN"と呼んだ。真空管は三極管UV-201Aを使用している。この機種は1924年にTrirdyn 3-R-3型として$65で発売された。翌1925年にはキャビネットが豪華なTrirdyn Special の追加にあわせてTrirdyn Regular と呼ばれるようになり、$50に値下げされた。初期の3-R-3型とはツマミの配置などが異なる。

安価でシンプルなこのシリーズのセットは当時日本に多数輸入され、日本のメーカによるコピー品も数多く作られた。

(所蔵No.11719)

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Crosley Super Trirdyn Special The Crosley Radio Corporation 1925年 $60

 

TUBES: 3-UX-201A,

1925年9月にTrirdyn シリーズはモデルチェンジされてSuper Trirdyn と称する様になった。これは最高級のSpecial 型である。旧型のシンプルなデザインからより大型で豪華なキャビネットに変更された。回路的には大きな変更はなく、レフレックスと再生検波を併用して3球で5球ニュートロダイン並みの性能を出すことを謳い文句にしていた。シャーシはより小型化され、合理的な構造となってる。中身に似合わない大きなキャビネットは、省電力型の真空管201Aが普及したことで電源を乾電池とすることが多くなり、電池をキャビネットに収めるようになったためである。

(所蔵No.11464)

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Crosley Model 5-50 5球再生式受信機 The Crosley Radio Corporation 1926年 $50

 

TUBES: 5-UX-201A,

クロスレー初のシングルコントロールセット。バリコン3個をシャフトでつないでドラムダイヤルを採用した。部品が安くなったためか、それまでのレフレックスをやめ、高周波1段、低周波2段の5球再生式となっている。再生式なので、アームストロングの特許を使用している旨がラベルに記載されている。同様のドラムダイヤルを採用したRCAのRadiola 20のように大きく傾斜したパネルとなっている。回路構成がほぼ同等のRadiola 20に比べると半額以下の低価格で発売された。

非対称のデザインのバランスを取るのは難しい。この機種ではダイヤルとスイッチのエスカッションがキャビネットの飾り枠に接してしまっている。もう少しバランスのとれた配置にすることは可能だったのではないかと思われるが、バランス良く配置された内部のレイアウトに合わせてパネルに穴を開けた形になっているため不格好なセットになった。

(所蔵No.11A079)

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Crosley Super Musicone マグネチック・スピーカ The Crosley Radio Corporation (1925-27) $12.70 

  

クロスレーのマグネチック・コーン型スピーカ。鋳物の台座以外のフレームはプレスで量産され、低価格を実現した。Super Musicone は、16インチの大型のモデルである。Standard Musicone として12インチのモデルが標準型として存在した。当時主流のホーンスピーカに対して音質の良さを宣伝していた。比較的低価格だったため、クロスレーの受信機とともに日本にも多く輸入された。

本機は、コーンの変形および脱落が見られる。

(所蔵No.10076)

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Gilfillan Model GN-1 ニュートロダイン5球受信機 Gilfillan Bros. Inc. (1924)  $175 (without tubes) / 380.00円

 

 
  ハゼルチン特許のライセンスプレート(左)と、長野県の販売業者の銘板(右)

TUBES: 5- UV-201A

カリフォルニアで創業した電気部品メーカ、ギルフィラン兄弟社が最初に作ったラジオセット。ハゼルチンのニュートロダイン特許のライセンスを受けただけでなく、技術導入も行ったため、典型的なニュートロダインセットに仕上がっている。幅60㎝の大柄なセットの正面には3つの扉があり、左側の乾電池室前の扉の中には周波数チャートが、右柄の扉の中には電源操作パネルとメータが収められている。

同社はGN-1の発売直後に廉価版のGN-2($140)を発売したため、GN-1は売れ残ってしまった。一説によると、この頃、ちょうど放送が始まったばかりの日本に売れ残りのGN-1がまとめて輸出されたという。このため、このモデルは現在アメリカではほとんど見ることはないが、日本には数多く残っている。アメリカで$175で発売されたこのモデルが日本では400円程度で販売された。ラジオラスーパーヘテロダイン(900円程度)に比べれば半額くらいだが、国産や廉価な輸入ニュートロダインセットが250-350円程度だったことを考えるとかなり高級なセットである。

舶来セットとしてポピュラーだったこの機種のキャビネットの扉や蓋にみられる模様は、多くの国産キャビネットに模倣された。

本機には、写真に示すように、長野県上諏訪のFUJIMORI ELECTRIC という会社の銘板が付いている。電気年鑑昭和8年版の名簿には、電気諸機械設計、工事請負業として、上諏訪町 藤森喜代志商店(創業明治45年)の記載がある。銘板の英文表記とは一致しない点もあるが、この会社が扱ったものと考えるのが妥当と思われる。

本機は、真空管および、左右の扉のツマミが失われている。

(所蔵No.11974)

LIST


Gilfillan Model GN-2 ニュートロダイン5球受信機 Gilfillan Bros. Inc.  $140 (without tubes) / 300.00円

 
外観(所蔵No.11A233)
 
内部:ニュートロドンが失われている(所蔵No.11A259)

内部の銘板(所蔵No.11A259)

底板に押された焼き印(所蔵No.11A259)

TUBES: 5- UV-201A

カリフォルニアで創業した電気部品メーカ、ギルフィラン兄弟社が最初に作ったラジオセットGN-1の発売1ヶ月後に発売された廉価版のセット。GN-1とGN-2の違いはキャビネットのみである。

本機には、底板に「東京物理学校」(現東京理科大学)の焼き印が押されている。

本機の外観には傷みがあるため、もう1台の外観を示した。

(所蔵No.11A233/11A259)

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Grebe Synchrophase MU1 ニュートロダイン5球受信機 A.H. Grebe & Co.,Inc. (U.S.A. 1925) $155

 

アメリカ、グレーべ(発音はグリービーとなる)社の高級受信機。ニュートロダイン方式の高周波2段低周波2段の5球受信機で、真空管はUV-201Aを使用している。同社のラジオは、ローロスバリコンを垂直に配置するレイアウトに特徴があり、この機種は3つのバリコンがチェーンで連結され、連動するようになっている。コイルには、リーケージ低減を狙ったビノキュラー(Binocular:双眼鏡の意)コイルが使われている。

個性的でデザイン、レイアウトともに美しいセットである。

(所蔵No.11465)

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Hammarlund-Roberts 5球再生式受信機キット Hammarlund-Roberts Co. (1925) $60.85 (キャビネット別、キット)

 

TUBES: 5- UX-201-A

後に通信型受信機のトップメーカーとなるハマーランド社が製造した5球再生式ラジオ。キットで供給され、ハマーランド社自身が製造したバリコンを始め信頼性の高いメーカの部品を組み合わせていた。本機はベルベット・バーニヤ・ダイヤルを使用しているが、広告にはホットケーキ・ダイヤルを使った絵が掲載されている。

当時キャビネットは別売となっていた。本機は、手作りの粗末なキャビネットに収められている。

(所蔵No.11814)

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The Colin B. Kennedy Company


Kennedy Model VI 4球再生式受信機 1924年 $105

 

 

TUBES: 4 - UX-201A

アメリカには比較的少ない斜めパネルに真空管をむき出しにしたヨーロッパスタイルの高級受信機。同調にはバリオカプラが使われている。検波と低周波3段の各ステージにフォーンジャックが備えられ、フォーンジャックを挿すと、後段のフィラメントの電源が切れるようになっている。Model XI は、パネルを金属製に変更したModel XI Type 420 にマイナーチェンジした。

本来はUV-201が標準に設定されていたため、真空管がよく見えるデザインはレオスタットの操作に便利だったが、フィラメントがほとんど見えないUX-201Aが使われるようになって実用性はなくなった。説明書にはUV-199、C-12、WD-11を使う場合の電池の接続についても記されている。真空管のアダプタを使う前提だろうか。

シャーシはアルミフレームで組まれ、当時一般的な裸の角線ではなく、被覆電線が使われていて、コンパクトにまとめられている。

本機には、仙台放送局(JOHK)のラジオ相談所で修理したラベルが残っている。この日付は1933(昭和8)年で、長く使われたことがわかる。このため低周波トランスがすべて日本製に交換され、大型の部品を納めるために本来は後部の電池ケースとの間の仕切り板が取り外されている。

本機は、トランスが脱落し、ベークライトシャーシが割れている。

(所蔵No.11A265)

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RCA: Radio Corporation of America


Radiola V型 AR-885 鉱石検波/再生検波3球受信機 1922-23年 $132.50 (without Tubes)







 
ラジオ部(左)と検波増幅部(右)のラベル

TUBES: UV-200 UV-201 UV-201, Crystal Detector, A: DC6V, B: DC40V, C: DC14V

RCAが最初期に発売した放送用ラジオの一つ。GEがRCA向けに製造したもの。元々黒色のパネルで別々に発売されていた探り式鉱石ラジオAR-1300と3球検波増幅器AA-1400を木製の台に置いて天板をかぶせて1台の製品としたもの。木製台に合わせて金属ケースをマホガニー風の木目印刷としている。鉱石ラジオ単独で使うか、探り式鉱石の接触を外してチューナとして、ソフトバルブUV-200による再生検波とUV-201による2段増幅器に接続してスピーカを使用する。

放送が始まったばかりのラジオらしく、通信機のデザインを色濃く残している。オリジナルのAR-1300、AA-1400の広告は家庭用ラジオというよりアマチュア無線用受信機のような文章である(8)。通信機そのものを木目印刷と木製台で家庭用に仕立て直したものである。ラジオ放送の受信が、BCLのような趣味から家庭の娯楽になったばかりの時代の製品である。

急速に技術が進歩した時代だけあって、ラジオラVは、真空管をWD-12、UV-201A/UV-199(アダプタ使用)と組み合わせを変え、発売当初、球なしで$132.00だった価格は1923年末には真空管とスピーカ(Westinghause Type FH)込みで$142.50に値下げされた。この頃、改良型のV-A (AR-885-A)に移行するが、まさに「通信機が家庭に入った」スタイルの、このラジオセットは1924年春にはカタログから落とされた。(8)

(所蔵No.11A304)

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RCA Model FH Loud Speaker Radio Corpolation of America : RCA (1923-25) $36.50

RCAは、レシーバ式のものか、ホーンスピーカを自蔵したラジオを多くラインナップしていたが、1923年モデルから、スピーカを持たないセットを多く発売するようになり、スピーカが必要になった。このFH型スピーカは、RCAブランドで最初に発売されたホーンスピーカである。口径が約35㎝ある大型スピーカである。

実際の製造はウェスチングハウス社で行われたが、複雑な構造が災いして生産性が低く、製品の供給にも問題があった。このため、GEが生産した一回り小型のUZ-1320型が用意され、同じ価格で併売されるようになった。UZ-1320型は1924年9月に改良型の低価格モデルUZ-1325型にモデルチェンジされたが、FH型は大型の上位モデルとして1925年2月まで販売が継続された。このため、多くの種類のRadiola受信機と組み合わせて使用された。

(所蔵No. 10067)

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Radiola III型2球受信機 (1924 U.S.A.) Radio Corpolation of America : RCA $35.00

 

TUBES: 2- WD-11

小型真空管WD-11を2本使用するシンプルな受信機。アメリカでは$35と比較的低価格で発売された。バリコンではなく、コイルの角度を調整するバリオカプラで同調する。バンドは中波帯とほぼ等しい220-50mである。スピーカーを鳴らすには別売の2球式アンプ($30)を接続する必要がある。アンプ部を内蔵した4球のIII-A型($65)もあった。このシリーズはRCAのボトムエンドを構成し、50万台近く生産されたという。

本機は底板が失われている。実際には右の写真のように内部を見ることはできない。

(所蔵No.11280)

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Radiola III-A型4球受信機 (1924 U.S.A.) Radio Corpolation of America : RCA $65.00

 

TUBES: 4- WD-11

ラジオラIII型に、2球のアンプ部を追加してひとつのキャビネットに収めたモデル。スピーカを直接鳴らすことができる。高周波部はIII型とまったく同じである。真空管は、三極管WD-11を4本使用する。電源はA電池が4-6V、B電池が90V、C電池4.5Vの3種類の電池を必要とする。本体は小型だが電池、スピーカ、アンテナ、アースを含めたシステムはかなり大掛かりなものになる。

本機は、真空管が失われている。

(所蔵No.11460)

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Radiola Superheterodyne AR-812 (1924 U.S.A.) Radio Corpolation of America : RCA



 
(左)パネルの裏にある銘板 (右)東京電気のデカール

シャーシは簡単に前側に倒せるようになっている

  
キャビネット内部の注意書き

TUBES: 6- UV-199

古典ラジオを代表する高級受信機。メーカ品としては世界初のスーパーヘテロダイン方式を採用したセットといわれる。低消費電力真空管UV-199の使用により乾電池で動作する。乾電池を左右の箱に、ループアンテナをシャーシ後ろに内蔵し、スピーカを除いて外部接続なしに聴くことができたため、幅90cnの大型機にもかかわらずハンドルを備え、一応「ポータブル」受信機とされた。カタコムと呼ばれる金属ケースに回路を密封している構造に特徴がある。この受信機にはラジオラの2桁のナンバーは与えられなかった。アメリカではこの高級受信機が1年間で10万台も生産された。

アメリカでは$269、日本では850-950円と、家が1件建つほどの価格で販売された。本機(所蔵No.11A281)には、パネル正面に "TEC" のデカールがある。放送開始当時に正規輸入され、東京電気が販売したものであることを示している。

(所蔵No.11408, 11A281)

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Radiola Loud Speaker UZ-1325 Radio Corpolation of America : RCA (1924-26) $25.00(1924)

AR-812型と同時代に発売されたホーンスピーカ。AR-812だけでなく、同時期の多くのRadiola受信機と組み合わせられた。RCAが発売したホーンスピーカの最後のモデルであり、翌25年には100型コーンスピーカ(UZ-915)が発売された。新しいコーンスピーカは35ドルと高価だった。このためUZ-1325は、25年2月に価格を18ドルに値下げして1926年末まで販売が続けられた。

(所蔵No.10066)

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Radiola 25 (AR-919) 6球スーパー Radio Corpolation of America : RCA (1925-27) $165

 

TUBES: 5- UX-199 UX-120

AR-812に続く、2世代目のラジオラ・スーパーヘテロダイン。回路はAR-812と同じセカンド・ハーモニクスを使うオートダイン式コンバータの6球スーパーである。真空管はUX-199を5本と出力管としてUX-120を1本使用している。旧来の”Catacomb"に回路が納められた構造は同じだが、ソケットがUVからUXに変更されている。同調と局発のダイヤルはクラッチ付のカップリングで結合され、簡単に連動と独立した操作を行うことができた。このダイヤルをRCAでは”Thumbwheel Dia”と呼んだ。ドラムには放送局のコールサインを鉛筆で記入することができた。

このセットは、専用のループアンテナを天板中央のコネクタに接続して使用する。バッテリーをキャビネット左右に内蔵するため、幅90cm近い巨大なラジオである。スピーカは古いホーン型のUZ-1325の他に、同時に用意されたコーンスピーカ、モデル100,102,104から選ぶことができた。この上のクラスには8球の28型があった。この25型は9万4000台あまり生産されたほか、同じ回路で構造が異なるシャーシが電蓄組込み用に生産された。

(所蔵No.11721)

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Radiola 20 AR-918 高一再生検波5球受信機 Radio Corpolation of America : RCA (U.S.A. 1925-27) $115(発売当初)

 

TUBES: 5- UX-199 UX-120

RCAのローエンドモデルとなるTRF受信機。UX-199を4本で、高周波1段と検波、低周波増幅2段を構成し、UX-120でスピーカを駆動する。キャビネットのデザインは上級機の25,28型スーパーと共通である。左に選局、右にバリオカプラーによる再生用のドラム型ダイヤルにまとめられた操作系は扱いやすかった。シングルコントロールとするためバリコンはカップリングで連動し、バリコンは周波数直線型であった。ドラムには放送局のコールサインを鉛筆で記入することができた。正面パネルのツマミは各高周波段微調用のバリコン2個と、フィラメント調整用のレオスタット2個である。右端のジャックは、フィラメントチェック用の電圧計をつなぐためのものである。

本機は13万台以上生産されたという。

(所蔵No.11717)

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Radiola Loud Speaker Model 100 (UZ-915) Radio Corpolation of America : RCA (1925-27) $39

Radiola 2025と組み合わせられるスピーカ。RCA初のマグネチック・コーンスピーカである。金属性キャビネットに12インチのユニットを収めている。"Electrical TOne Clarifier" と呼ぶフィルタを備えている。このスピーカは、1927年に小型の100-A型にモデルチェンジされた。

(所蔵No.10045)

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The Magnavox Company


Magnavox M-4型 ホーン・スピーカ The Magnavox Company (1924) $25

  

口径28cmの、アメリカ製のものとしては比較的小型のホーン・スピーカ。マグネチック・スピーカであるが、同社はこれを"Semi-dynamic"と称して、エキサイト用の電源が必要なダイナミック型より扱いやすいことを売りにしていた。手ごろな大きさと比較的低価格であったこのモデルは日本に多く輸入された。

(所蔵No.10065)

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Magnavox 25型 高声器自蔵高周波2段5球受信機 The Magnavox Cmpany (1925) $145

 
 (右:背面)向かって左が出力端子、右がA電池をつなぐ端子。
 
(左)内部、引き出し型のシャーシ (右)シャーシのケースに表示された銘板

ホーンスピーカの老舗、マグナボックスのホーンスピーカを内蔵した高周波2段低周波2段の5球受信機である。真空管は201-Aを使用する。ただし、同社から、防振型の特殊な同等管が発売されていた。後に一般的になるギャング型3連バリコンを使用することで完全なシングルコントロールを実現しているのが特徴である。このため、シャーシが小型にまとめられ、当時の電池式受信機とは一線を画す、後の世代の受信機に近いレイアウトとなっている。シャーシは抽斗状の木製ケースに収められている。このD型シャーシは同社の他機種と共通化され、改良時に簡単に入れ替えられるように考えられていた。

また、バッテリーケーブルとシャーシの接続は、丸型の多ピンコネクタが使用されている。A電池は外部から接続し、B電池はスピーカ部に収納する。

(所蔵No.11722)

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National Co., Inc. / Browning-Drake Corp.


Browning-Drake 式5球再生式受信機 1925年頃 アメリカ製

 

 TUBES: 5- UV/UX-201A

Fredelick H. Drake とGlenn H. Browning が特殊な高周波トランスを使ったTRF回路の特許を取った。この回路にNational Co., Inc.製のコンデンサやダイヤルを使用していた関係で、National Regeneaformer としてキットが発売された。本機はブローニング・ドレーキのキットを使用した高一低三の5球受信機。高周波増幅にニュートロダイン方式を採用している。高周波トランスは内側に再生コイルを持つ。ニュートロダインと再生検波という、2大特許に抵触する可能性のあるブローニング・ドレーキ式は、主要なメーカが製造することは無かった。これらの特許はアマチュアの実験、研究に限っては使用が許されていたため、キットやパーツの形で供給されたものをアマチュアが組み立てたものが多い。このセットもそのひとつと思われる。

(所蔵No.11818)

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Browning-Drake Model 5R 5球再生式受信機 1926年頃 $95.00

 

TUBES: UX-201A X 5

National Co., Inc.にキットの製造販売を委託していたブローニング・ドレーキは、1925年に独立して完成品のラジオを発売するようになった。5-R型は、1925年発売のJuniorを翌年マイナーチェンジしたモデルである。低周波増幅回路を抵抗結合としているのが特徴である。乾電池で使用するときは199と120の使用が推奨され、A電池に蓄電池を使用するときは201Aと112Aを使用できた。

(所蔵No.11A306)

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Remler (Home brew set manufactured from Kit) 8球スーパー Gray and Danielson Mfg. Co. (U.S.A.) (1925年頃)



TUBES: 8- UV-201A

アメリカでは放送開始直後、放送局が数百も乱立し、周波数の配分が不明確だったために混信が多発した。このためスーパーヘテロダインが流行した。スーパーラジオを製造するには、RCAにアームストロング特許のロイヤルティを支払う必要があった。しかし、同社はアマチュアの実験に対しては特許の範囲外としたために、多くのメーカがスーパーの部品やキットを発売した。レムラーは、その中の代表的なブランドで、"clamshell" 型の特徴あるバリコンと低周波トランスのような形状のIFTが有名である。このバリコンは、内臓のギヤで直線性と微動ダイヤルを実現する凝ったものである。

本機はレムラーのキットを使って組み立てられた典型的なセットで、中間周波3段(I.F.は45kc)、低周波2段の8球スーパーである。白い専用のダイヤル目盛板と、メータを配したデザインがレムラー式スーパーの特徴である。このセットの操作はかなり難しい。左右に2つの独立したバリコンと、中央下段に各段のフィラメント用レオスタットがあり、メータの両脇にIF段のグリッドバイアス調整と第一検波のバリオカプラの調整つまみがある。そのため、チューニング確認用のメータかランプが設けられた。メータを複数取り付けてバッテリーのモニターに使う場合もあった。

8球スーパーともなるとどうしても巨大なセットにならざるを得ない。このセットの幅も70cmを超えている。このセットはアメリカで組み立てられたものだが、レムラーのパーツは日本にも輸入された。8球スーパーは当時としては最も贅沢なラジオのひとつであった。

本機は真空管が失われている。また、動作試験のため、C電池の代わりに単一型乾電池が付けられている。

(所蔵No.11927)

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Remler (Home brew set manufactured from Kit) 8球スーパー Gray and Danielson Mfg. Co. (U.S.A.) (1925年頃)



TUBES: 6- UV-199

上のセットと同じ構成のレムラー社のキットを使った8球スーパーである。低消費電力の199を採用したことで、電源に乾電池を使えるようになった。小型の199を使ってもキャビネットは巨大だが、後ろ半分が電池ケースとなっている。また、このセットはレオスタットの数が減らされ、第一検波の調整はセット内部に納められて半固定式となっている。操作を少しでも簡単にするための工夫が施されている。

本機は、真空管が失われている。

(所蔵No.11927)

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Silver-Marshall Shielded Six Type 630 高周波3段6球受信機 Silver-Marshall. Inc. (1926) $95(kit)



 

 

TUBES: 6-201A

アメリカの高級受信機メーカ、シルバーマーシャルのTRFセット。高周波段はステージごとにアルミ製のケースで厳重にシールドされている。この構造はShielded Sixの名前の由来ともなり、同社の製品の特徴である。高周波特性が安定しているためプラグインコイルによるバンド切替により、オールウェーブ受信が可能になっている。真鍮製の美しいバリコンは高周波部がリンク機構で連動し、スムーズな同調が可能になっている。

大型のトランスにより低周波特性も良好だが、金属製シャーシを含め、これらの特徴により、非常に重いセットとなっている。銘板には、アームストロング特許の適用除外となっているアマチュアの実験用に限るという表示がある。特許料の支払いを逃れるため、同社の製品の多くがキットとして供給された。この製品も例外ではない。高性能な高級機だが、キットのため、RCAなどの完成品よりは割安である。

(所蔵No.11938)

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Ware Radio Corporation


Ware Type T 3球ニュートロダイン 1924年 $65

 

TUBES: 3 - UV-199

創業者のWareは、ニュートロダインの発明者、ハゼルチンの弟子であった。そのため自社製品にハゼルチンの特許を導入し、ニュートロダインとした。ニュートロダイン受信機は通常5球式となるが、この製品は3球式である。しかし、レフレックスを採用しているため、アンプを外付けしなくてもスピーカを鳴らすことができる。

(委託No.S11104) 柴山 勉コレクション

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ループアンテナ メーカ不明(アメリカ製) 1924年頃

初期のラジオに使われた典型的なループアンテナ。角形のループを回転することができる。日本でも電波の強い地域で使われた。この形のループアンテナとラッパ型のスピーカが当時のラジオを象徴する形だったため、多くのイラストなどに描かれている。

(所蔵No. 10096)

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Quali-Tone ループアンテナ Duro Metal Products Co.,  1924年頃

比較的コンパクトなアメリカ製ループアンテナ。指向性があるので回転させて感度の良いところを探す。

高さはあるが、幅を抑えているので回転させる時には使いやすかっただろう。

(所蔵No. 10097)

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その他の国のセット


ATM "Claritone" ホーンスピーカ Automatic Telephone Manufacturing Co., Ltd. (1924)

英国製の中型ホーンスピーカ。英国放送会社(BBC:後の英国放送協会)の認定を受けている。

本国ではポピュラーな製品だが、日本にはわずかな数しか輸入されなかった。

(所蔵No.10072)

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N&K スピーカ Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃

 

レシーバで知られるドイツ、N&Kのスピーカ。寄木細工で作られた”お椀”を2つ重ねた形になっていて、背面中央にホーンドライバが取り付けられている。トランペットスピーカに見られるフォールデッド・ホーン型スピーカである。

本機は、海外ではあまり一般的ではないが、日本からよく発見される。大量に輸入されたのかもしれない。

本機は、近年修理されている。リード線はこの時交換されたと思われる。ユニットに表示された向きが90度回っている。実際にはリード線が下から出る向きに取り付けられるのが正しいと思われる。

(所蔵No.10107)

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参考文献

 1)浦部信義 「社団法人名古屋放送局の成立」 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会編 ゆまに書房)
 2)「ラヂオ放送の夜明け JOAK東京放送局誕生まで」 向後英紀 『メディア史研究』 Vol. 20 (メディア史研究会編 ゆまに書房)
 3)電波監理委員会編 『日本無線史』 第11巻 (電波監理委員会 1951年)
 4)平本 厚 『戦前日本のエレクトロニクス』 (ミネルヴァ書房 2010年)
 5)Alan Douglas, "Radio Manufacturers of 1920's" Vol.1-3, (Vestal Press (U.S.A.) 1991)
 6)鎌田幸蔵 『雑録 明治の情報通信』 (近代文芸社  2008年)
 7)田口達也 『ヴィンテージラジオ物語』 (誠文堂新光社 1993年)
 8)Alan Douglas, "Radiola The Golden Age of RCA 1919-1929" (Sonoran Publishing(U.S.A.) 2007)

      

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