日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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レシーバ展示室
 
1925-28


CONTENTS

解説編

レシーバ展示室

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参考文献


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解説編


レシーバ(Receiver)は、ラジオ用語では受信機を意味するが、電話用語では「受話器」を意味する。電話機には手で持って使う受話器が取り付けられたが、電信のオペレータは頭に載せて使う受話器を使用した。Head Set ともいう。片耳式と両耳式があり、無線電信が始まると、無線のオペレータも受信用に使用した。

ラジオにはインピーダンス2000オームのコイルで金属製の振動板を駆動するタイプが使われた。ハイ・インピーダンスのため、マッチングトランスは使わず、鉱石ラジオや真空管ラジオの出力回路に直接接続する。放送が始まったころは、鉱石ラジオや単球式など、スピーカを鳴らせないラジオには必須だった。

1930年代に入って3球式以上のラジオが主流になると家庭ではスピーカで鳴らすことが普通になり、レシーバを使うことはほとんどなくなるが、アマチュアからプロまで無線のオペレータにはダイナミック型ヘッドホンやクリスタルイヤホンが普及するまで戦後も長く愛用された。

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レシーバ(受話器)展示室


輸入品


ドイツ製

N&K D型受話器 Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年 型式証明第18号

N&K 両耳式レシーバ Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃  型式証明第21号

N&K 受話器 Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃

Telefunken EH333 両耳式レシーバ Telefunken GmbH (Germany) 1925年頃 型式証明第19号

TEFAG E.I.383 両耳式レシーバ Telephon Aktiengesellschaft vorm. J. Berliner(Germany)

サバ受話器 シュワルツ ヴェルダー器具製作所(独) 1925年 型式証明第74号

Nesper 両耳式レシーバ Dr. Nesper, Berlin (Germany) 1925年頃

アメリカ製

Camco Cannon-ball Cannon, C.F.,Co., 1923-24年頃

Murdock No.55型 Murdock, WM.J. Co. / William J. Murdock Co.  1917年

Western Electric 509W Western Electric Co., 1920-25年頃 35.00円

ブランデス受話器 C.Brandes. Inc. 1924年頃 15.00円

Peerless受話器 United Radio COrp.  1925年頃

イギリス製

スターリング・ライトウェイト受話器 Sterling Telephone & Electric Co. (U.K.) 1925年 型式証明第58号

スターリング・リリプット受話器 Sterling Telephone & Electric Co. (U.K.) 1926年 型式証明第77号

ETL 両耳式レシーバ Ericsson Telephones Limited (G.B.) 1926年

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日本製


NEC 受話器 日本電気 1924年 (型式証明第2号) 14.00円

安中AR-82型受話器 安中電機製作所 1925年 型式証明第17号

N.N.K 受話器 メーカ不明 1926年頃

Peace 受話器 メーカ不明 1930年頃 2.50円

FORD Radio Receiver メーカ不明 1930年頃 

Telephonken 受話器 メーカ不明 1930年頃

スターリング受話器 三共電機製作所 1929年頃

日本無線 Telefunken Type (後期型) 日本無線電信電話(株) 1932年

澤藤 SF-24号 澤藤製作所 1928年頃

澤藤 SF-48型 Radio Head Set 澤藤製作所 1933年頃 

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関連のページ
(別ファイル)

解説:放送開始期のラジオ

鉱石受信機

日本製電池式受信機

外国製電池式受信機

初期のスピーカ展示室

型式証明受信機及び付属品

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レシーバ(受話器)、ドイツ製


N&K D型受話器 Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年 型式証明第18号

 

テレフンケンと並ぶドイツを代表するレシーバーメーカ、N&Kの初期の製品。モデル末期だったのか、ほぼ同時に改良された新型(第21号)が型式証明を受けている。
このため、こちらのモデルは日本ではあまり使われなかった。

(管理No.K10010)  (個人蔵)

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N&K新型受話器 両耳式レシーバ Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃 型式証明第21号

 

ドイツ製のレシーバで、当時数多く輸入された。通常のレシーバは2つのコアにコイルを巻いて磁石の両側に配置するが、この機種では、E型の磁石の中央の磁極にコイルを取り付ける形に改良されている。サイズが大きめで、シンプルな構造だったためか、コピー品も多く作られた。当時、付属品にも形式証明が必要だったため、形式証明21番が与えられた。正式な型番は不明だが、官報に告示された名称として、旧型のD型に対して「最新型」とされている。

(所蔵No.10069)

LIST


N&K 受話器 Neufeldt & Kuhnke Kiel (Germany) 1925年頃

 

上と同じN&K のレシーバだが、こちらは廉価版である。日本人にはこちらのほうが軽くて使いやすいかもしれない。この構造は日本のメーカがコピーして安価なレシーバを製造した。

(所蔵No.S11018) (柴山 勉コレクション)

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Telefunken EH333型 両耳式レシーバ Telefunken GmbH (Germany) 1925年頃  型式証明第19号

 

ドイツを代表するレシーバ。輸入された本国製のほかに、ライセンスを受けて国産化した日本無線製のものもあった。鉱石受信機時代に広く使われ、形式証明19番が与えられた。後に澤藤製作所で国産化されたSF333型が、戦後まで広く使われた。小型で精密な加工を必要とするためか、無名メーカによるコピー品は少ない。

(所蔵No.10082)

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TEFAG E.I.383  両耳式レシーバ Telephon Aktiengesellschaft vorm. J. Berliner (Germany)

 

ドイツを代表するメーカのレシーバ。テレフンケン型に近い構造である。

(所蔵No.10086)

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サバ受話器 シュワルツ ヴェルダー器具製作所(独) 1925年 型式証明第74号

 

後にラジオメーカとして有名になるドイツのメーカのレシーバ。N&Kとテレフンケンというドイツを代表するメーカのレシーバが日本では確固たる地位を築いていたが、サバは型式証明を取ったのも遅く、広く普及するところまではいかなかった。

(所蔵No.S10017) (柴山 勉コレクション)

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Nesper 両耳式レシーバ Dr. Nesper, Berlin (Germany) 1925年頃

 

ドイツを代表するレシーバの一つ。ユニット側面に音量調節ネジが付いているのが特徴である。ツマミに表示されている文字には、このように "Dr. Nesper Phone" とあるものの他に "Dr. Nesper Berlin" と表記されたものもある。

本機は、バンドの劣化と、劣化したケーブルを補修した跡がある。

(所蔵 No. 10013)

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レシーバ(受話器)、アメリカ製


Murdock No.55型 両耳式レシーバ Murdock, WM.J. Co. / William J. Murdock Co. (U.S.A.) 1917年 $5.00

 

アメリカ製のごく初期のレシーバ。本来ラジオ用ではなく、電信や、初期の火花式無線電信に用いられた。価格が5ドルと安価だったため、アマチュアにも広く使われ、ラジオ放送が始まった1920年代初期まで使われた。2枚重ねの金属製のバンドと、バンドをユニットの中央で支持する構造は初期のレシーバの特徴である。ケーブルはピン端子をユニットに接続するようになっている。金属が露出するため、鉱石ラジオでは問題ないが、真空管式に使うには感電の危険がある。

本機は片側のユニットのネジ部が破損している。オリジナルのケーブルは失われている。s

(所蔵 No. 10113)

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Western Electric 509W Western Electric Co., (U.S.A.)  1920-25年頃 35.00円(山野楽器カタログ1925年より)

 

米AT&Tに電話機器を供給していたウェスタンエレクトリックのレシーバ。通常の輸入品の倍以上と高価だったため、日本では主に業務用に使用されたと思われる。

(所蔵No.S11020) (柴山 勉コレクション)

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ブランデス受話器 C.Brandes. Inc. (U.S.A.) 1924年頃 15.00円(山野楽器カタログより)

  

アメリカ製を代表するレシーバ。初期のRCAラジオラ受信機の純正レシーバに採用された。日本にもラジオラとともに輸入され、音質の評価は高かったが、高価だったため少数派であった。

端子がユニット側面にむき出しになったデザインは初期のレシーバの特徴だが、鉱石ラジオや、B電圧の低い単球式程度なら問題ないが、本格的な真空管式ラジオに使うには危険なため、端子はユニット内部で接続するようになった。

(管理No. K10015)

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Camco Cannon-ball Cannon, C.F.,Co., (U.S.A.) 1923-24年頃

 

アメリカの中級レシーバ。当時日本に輸入されていた。ブランデスに近い当時の標準的なスタイルで、端子がユニット側面にむき出しになっている。この構造は鉱石ラジオや、B電圧の低い単球式程度なら問題ないが、本格的な真空管式ラジオに使うには危険なため、端子はユニット内部で接続するようになった。

(所蔵No. 10117)

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Peerless受話器 United Radio COrp. (U.S.A.) 1925年頃

 

アメリカ製の比較的高級なレシーバ。ピアレスは、後にオーディオトランスのメーカとして有名になる。

(所蔵 No. 10112)

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レシーバ(受話器)、イギリス製


スターリング・ライトウェイト受話器 Sterling Telephone & Electric Co. (U.K.) 1925年 型式証明第58号

 

英国・スターリング・テレフォンのレシーバ。一般的に使われた鉄製または金属芯に皮張りのバンドに代えてアルミ製とし、ユニットも小型化して軽量化を図ったモデル。長時間の電信のオペレートには疲労軽減の効果があったかもしれないが、ラジオ用にはあまり意味がなく、同社がこの型式証明が告示された年に、マルコーニの傘下に入り、自社ブランドでのラジオ機器の生産から撤退していることもあって普及しなかった。

(管理No.K10012) (個人蔵)

LIST


スターリング・リリプット受話器 Sterling Telephone & Electric Co. (U.K.) 1926年 型式証明第77号

 

英国・スターリング・テレフォンのレシーバ。この型式証明が告示された年に、同社はマルコーニの傘下に入り、自社ブランドでのラジオ機器の生産から撤退している。最後期のスターリング製品といえる。オリジナルが生産されなくなっても、日本では「スターリング型」と称したコピー商品が出回っていた。

(管理No.K10014) (個人蔵)

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ETL 両耳式レシーバ Ericsson Telephones Limited (G.B.) 1926年

 

スウェーデンの通信機メーカ、エリクソンの英国子会社のレシーバ。英国製によく見られる金属製のバンドを2枚重ねた形状と、クラシックなユニットの中央でバンドを固定する構造が特徴である。同型のレシーバは1920年代前半から作られているが、1926年から社名変更によりブランドがEricssonからETLに変更された。エリクソンは早くからヨーロッパ各国に進出し、それぞれ異なるモデルを生産していた。

(所蔵 No. 10033)

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レシーバ(受話器)、日本製


NEC 受話器 (日本電気 1924年) 型式証明 No.2 14.00円

  

日本電気がウェスタンエレクトリックの受話器をライセンスで国産化した。両耳型レシーバ。型式証明No.2を取得している。No.1は欠番なので、これが実質的な型式証明第1号である。
当時は、このレシーバのようにラジオの付属品や真空管にも型式証明が要求された。

(個人蔵)

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安中AR-82型受話器 (安中電機製作所  1925年) 型式証明 No.17

  

型式証明時代のレシーバ。安中電機製作所(現アンリツ)は、明治時代に36式無線機を納入した日本の無線業界のパイオニアであり、この時代には多くの型式証明を取得したセットを生産した。当時は、このレシーバのようにラジオの付属品や真空管にも型式証明が要求された。

(管理No.K10008) 個人蔵

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N.N.K 受話器 メーカ不明 1926年頃

 

ドイツ、N&K受話器のコピー品。N&KならぬNKKである。広く普及した新型ではなく、旧モデルのD型をコピーしている。カバーの刻印とユニットを保持する金具の曲げ方が異なるほかは、内部の細かい部品まで忠実にコピーしている。

(所蔵No.S11035) (柴山 勉コレクション)

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Peace 受話器 メーカ不明 1930年頃 2.50円

 

中小メーカが製造した安価な普及型受話器。Ford受話器と並ぶ安物の代表的な製品である。

本機のバンドはオリジナルでなかったため、形状が似ている澤藤のものに交換した。

(所蔵No.S1005) (柴山 勉コレクション)

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FORD Radio Receiver メーカ不明 1930年頃

 


同じブランドの箱、上の製品と正しい組み合わせかどうかは不明(個人藏)

日本製の普及品の両耳レシーバ。自動車のフォードと同じロゴが使われているが、自動車会社とは全く関係ない。

この品物には、アメリカ製のPACENTのプラグが付けられている。バンド部分の白い紙は後から付けられたもの。

(所蔵No.10088)

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Telephonken 受話器 メーカ不明 1930年頃

 

上記のFordのレシーバと同じ形の安物のレシーバ。ブランドはTelefunkenをもじったもの。本家とは似ても似つかない品質である。

(所蔵No.S10002) (柴山 勉コレクション)

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スターリング受話器 三共電機製作所 1930年頃 3.80円

 

英スターリング製品のよう見えるが、日本製の偽物である。本物の表記が"STERLING LONDON" なのに対し、こちらは "STERING ENGLAND"となっていて、スペルと地名が異なる。また、これはブランドはスターリングだが、スターリングのコピーではなく、ドイツ、サバ社の製品のコピーである。シンガーブランドのホーン・スピーカを作っていた三共電機の製品である。

本機は、片側の金具が失われている。また、バンドはオリジナルではない。

(所蔵No.S10034) (柴山 勉コレクション)

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日本無線 Telefunken Type (後期型) 日本無線電信電話(株) 1932年

 

日本無線がドイツ、テレフンケンのEH333型レシーバをライセンスを受けて国産化したもの。日本製のテレフンケン型の「正規品」である。日本無線独自の型番でなく、「Telefunken Type」と刻印されているのがおもしろい。刻印以外はオリジナルと全く同じである。

(所蔵No.10093)

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澤藤 SF-24号 澤藤製作所 1928年頃

 

日本を代表するレシーバーメーカである澤藤製作所の製品。同社はテレフンケン製品のコピー品で知られるが、この機種は安価なN&Kの製品を参考にしたものと思われる。後に放送協会認定第22015号を取得した。

(所蔵No.S11026) (柴山 勉コレクション)

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澤藤 SF-48型 Radio Head Set  澤藤製作所 1933年頃

 

国産品を代表するレシーバ。テレフンケン型を国産化したもののひとつ。民生用としては高級品である。後に放送協会認定第22016号を取得した。

澤藤のレシーバはあまり形を変えずに1960年代までアマチュア無線や業務無線の世界で広く使われた。

このレシーバにはフォーンジャックが付けられている。鉱石受信機にはチップ端子をターミナルに取り付けることが多い。このようなジャックは真空管式受信機に多く取り付けられていた。電池式受信機の電池を節約するために使われたものか、アマチュアが短波受信機などで使用したものと思われる。

(所蔵No.10088)

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参考文献

1)浦部信義 「社団法人名古屋放送局の成立」 『メディア史研究 Vol. 20』 (メディア史研究会 ゆまに書房)
2)向後英紀 「ラヂオ放送の夜明け JOAK東京放送局誕生まで」 『メディア史研究 Vol. 20』 (メディア史研究会 ゆまに書房)
3)電波監理委員会編 『日本無線史 第11巻』
4)平本 厚 『戦前日本のエレクトロニクス』 (ミネルヴァ書房 2010年)
5)Radio Manufacturers of 1920's Vol.1-3, Alan Douglas, Vestal Press (U.S.A.) 1991
6)鎌田幸蔵著 『雑録 明治の情報通信』 (近代文芸社  2008年) 1,300円

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